
ジェミー・ダイモンCEOが提案するアメリカの「マーシャル・プラン」とは
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが
バイデン大統領に対し、国内のガスやその他のエネルギー資源を
より多く開発するための「マーシャル・プラン」を策定する必要がある
と語っているようです。
マーシャル・プランとは
マーシャルプランとは、第二次世界大戦の後に、当時のアメリカの国務長官ジョージ・マーシャル
の提案によって推進された、ヨーロッパ諸国に対する復興援助計画のことです。
正式な名称では欧州復興計画(ERP)ですが、通常はマーシャルプランと呼ばれます。
この復興計画でアメリカは、民主主義に忠誠を誓ったヨーロッパの国々に
無償または低金利によって経済的な援助をすることを通して、東ヨーロッパにおける
共産主義の勢力が広がるのを阻止する狙いがありました。その受け入れを巡って、
ヨーロッパの国々の対応は二分されて、西側の諸国では受け入れを表明し、
東側の諸国においては拒否を行いました。
マーシャルプランによって提供される資金の大部分は使途が指定されており、
人々の生活に必要になる農作物や、生産のために必要となる機械類などに限られ、
こうしたものについてはアメリカ産に限定されていたため、結局は
資金がアメリカ経済に環流するような仕組みとなっていたことも特徴的です。
ヨーロッパの経済が順調に復興していかなければ、ヨーロッパの各国で外貨準備が
整わず、アメリカの輸出も困難になってしまいます。ヨーロッパ諸国の復興は、
アメリカ経済としても必要不可欠の要素となりました。
ジェミー・ダイモン氏の提案は
バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻で価格が高騰した後、
石油・ガス会社にもっと早く増産するよう説得するのに苦労しています。
ダイモン氏 は大統領とその経済補佐官に対し、ヨーロッパと
アメリカのエネルギー安全保障のためにガスの増産が必要である
と述べています。
ダイモン氏が連邦政府に対してエネルギーと気候に関するより
積極的な姿勢を求めたことは、経済界がエネルギー安全保障の
実現に向けたリーダーシップと大きく大胆なアイデアを
政府に求めていることを明確に示すものです。
ダイモン氏は、ヨーロッパにおける液化天然ガス設備の増強、
ロシアからの輸入への依存度の低減、水素や炭素回収などの
新技術への投資を求めています。
ジェミー・ダイモン氏の発言の影響は
アメリカで最も影響力のある経営者の一人として、ダイモン氏の発言には
重みがあります。毎年春になると、ウォール街はダイモン氏の投資家向け
年次報告書に目を通し、ダイモン氏のグローバルな展望と
具体的な公共政策への提言の概要を知ることになります。
ダイモン氏は月曜日、ホワイトハウスで16人のトップエグゼクティブと
非公開の会合を開き、エネルギーの独立について訴えています。
エクソンモービル、コノコフィリップス、マラソン・ペトロリアム、バンク・オブ・アメリカ、
ビザなどのCEOが参加したと、関係者はAxiosに語っています。
この会合は大統領の公開スケジュールにはなかったが、バイデン大統領は
ウクライナに関する最新情報を提供するために約20分間立ち寄りました。
イエレン財務長官、ジーナ・ライモンド商務長官、ジェイク・サリバン国家安全保障顧問、
ブライアン・ディース国家経済会議理事も出席しました。
SCOOP: JPMorgan Chase CEO Jamie Dimon told Biden the White House needs to create a “Marshall Plan” to develop more domestic gas and other energy resources, Axios has learned.https://t.co/xfbwWDHJQ2
— Axios (@axios) March 23, 2022
ホワイトハウスの反応は
ホワイトハウス関係者は、「我々は、米国のエネルギー部門への投資について、
歴史的なアイデアをテーブルの上に置いており、それは我々の安全を強化し、
プーチンのような指導者の行動に対してより融通が利く」と述べています。
石油業界は、高いエネルギーコストを下げるために自分たちが果たすべき
役割について、政権と議会民主党が複雑なメッセージを送っていることに
不満を抱いています。
バイデン氏は石油会社に掘削能力を高めるよう求める一方で、大統領は石油業界が
原油価格の高騰を機に消費者から搾取していると指摘し、業界を動揺させ、
投資家を遠ざける可能性があるとしています。
バイデン氏は先週、「石油・ガス会社は、勤勉なアメリカ人の犠牲の上に利益を
積み上げるべきではない」と述べた。
米国石油業界と共和党の反応は
今月初め、エクソンモービルのダレン・ウッズCEOは、同社が「ロシアでの生産が
減少する中、世界の石油需要の増加を満たすために、生産の最大化に
取り組んでいる」と述べた。
バイデン政権は、2035年までに再生可能電力100%、2032年までに排出量45%削減など
、野心的な気候目標を掲げています。最終的には、2050年までに排出量を
ゼロにすることを目指しています。
共和党は、ガソリン価格の高騰とインフレ率7.9%を利用して、
大統領とそのエネルギー政策を批判しています。
「この問題を解決する方法は、この政権が石油とガスの生産に対する
攻撃をやめることだ」と、ジョン・チューン上院議員は述べています。
「米国をエネルギー的に自立させ、世界中の他の地域からのエネルギーに
依存しないようにする、米国の全面的なエネルギー戦略を打ち出すことだ」
と述べています。
まとめ
マーシャル・プランとは、そもそも第2次世界大戦直後のアメリカによる
欧州の復興プランのことを示しますが、JPモルガンのジェミーダイモンCEO
は、アメリカのエネルギー政策の転換としてつかっているようです。
いずれにしても、今回のロシア問題で、エネルギーや半導体など
安全保障にも関わる政策の大転換のひとつのように見えます。