アメリカのヒストリカル実質利回りチャートからわかる今後の予想展開は!?
10年物の実質利回りはここ数日、史上最低水準の水準で推移していました。
データに制限があるため、1997年以降のTIPSでしかアメリカの実質利回りは
測定できませんが、さらに過去にさかのぼって測定した場合
の過去のヒストリカルアメリカの実質利回りを描いたものを
紹介します。
アメリカのヒストリカル実質利回りチャートは
ドイツ銀行のクレジット・ストラテジスト、ジム・リードは、
3つの実質利回りシリーズに基づいて過去の実質利回りを
描いています。それは
・1997年までのTIPSを用いて
・1997年までのTIPSを用いて、スポット10年債利回りからスポット・インフレ率を差し引いたもの。
・スポットの10年債利回りからスポットのインフレ率を引いたもの、
スポットの10年債利回りからローリング5年平均のインフレ率を引いたもの
です。
現状利回りとインフレ率を用いてリードが計算したところ、実質利回りは
控えめに言ってもー4.15%と「非常に低い」水準であり、1980年以来の
低水準です。
「市場は5.4%のインフレが持続可能だと信じていないのは明らかだが、
今のところそれが現実だ」と述べています。
一方、スポット利回りと5年平均のインフレ率を用いた場合、実質利回りは
昨年夏の水準に低下しており、10年物の名目利回りは約0.50%、5年平均の
インフレ率は約1.7%でした。この時、実質利回りは70年来の低水準と
なりました。現在は、この水準から40bpsも低下しています。
The "Real" Real Yield Is -4.15%… And We Are Stuck With It Forever https://t.co/bb7N6ecrWz
— zerohedge (@zerohedge) July 29, 2021
現状の実質利回りの意味しているところは
これは何を意味するのか?
シティのマット・キングが最近の必読レポートで書いているように、
実質利回りが基本的に過去最低水準にある中で、これ以上上げようとすると
金融システムの崩壊につながる恐れがあります。このことは、ジム・リード氏
も指摘しています。
「ここ数年のこれほど負債が累積しているなかで、当局がレバレッジの上昇
に伴う資金調達を抑制しなければならないため、当面実質利回りは
マイナスのままになるだろうと述べています。パンデミック後はさらに
確信を深めています。
さらに恐ろしいことに、リード氏は「米国の実質利回りがプラスであれば、
世界中で債務危機を引き起こす可能性が高くなる」と指摘しています。
したがって、我々はおそらくこの体制から抜け出せないだろう」と結論づけています。
とはいえ、実質利回りがマイナスでも名目利回りが高くなることはあります。
実際歴史上の大規模な債務削減のほとんどは、インフレ率の上昇によって
相殺された経緯があります。ある意味、我々は今それを目の当たりにしている」
と指摘います。
今後、リード氏が最も強く確信しているのは、「実質利回りは大幅なマイナスを維持し、
その後、インフレ率は過去10年間よりも高くなるだろう」ということです。
まとめ
FRBが量的緩和を終了しない限り、また、世界がこれまで以上に大きな
金融刺激と流動性注入を正当化するために、毎年のように大きな
「危機」を見つけ続ける限り、このような状況は起こり続け、一方で
FRBがホースを止めてしまえば、この市場は、ゲームオーバーになってしまう
という矛盾の中に成り立っていると指摘されています。
ブレークイーブンインフレ率(BEI)とは?TIPSとの関係と現在市場が示唆していることは!?