中国では地方政府の資金調達を担ういくつかのビークル（LGFV）の

債務返済問題が話題になっており、金融市場を揺るがしています。

LGFVとは、中国の地方政府が資金調達するためのプラットフォームで、

Local Government Financing Vehicleの略です。地方融資平台、

地方政府融資平台とも呼ばれています。

LGFVとは

一般的に、インフラや政策主導のプロジェクトに資金を投じる

投資会社として存在し、債券を発行して資金調達しています。

地方債の発行や直接借り入れが認められていなかった地方政府の

資金調達手段として2008年の世界的な金融危機以降に急速に発展、

定着しました。地下鉄、高速道路、駐車場、都市施設などの

多くはLGFVによって建設され、今世紀初頭に36％だった

中国の都市化率は足元で65％まで上昇しています。

一般に中国では、地方政府の財政規律を維持するため、

地方債の発行が原則禁止されていますが、一方で地方での

インフラ開発の抜け穴として「融資平台」が発達しました。

その背景には、地方政府が高い経済成長を維持するため、

積極的に融資平台を活用したことがあり、また融資平台に

流れ込む資金の大半は、銀行や信託会社が販売する「理財商品」

と呼ばれる個人向けの運用商品となっています。

その背景には、地方政府が高い経済成長を維持するため、積極的に融資平台を

活用していました。

LGFVが経済全体を脅かすリスクは

中国債券市場の一角にひび割れが生じている。地方政府の

資金調達事業体（ＬＧＦＶ）は道路や空港、電力設備などのインフラ整備

の資金を賄うため債券を発行してきたが、こうした債務の

返済に充てる収益はほとんど確保できていない。

　　このため「地方融資平台」もしくは「融資平台」と呼ばれる

ＬＧＦＶは地方政府からの資金注入に頼っている。ただ、

内の不動産不況で、土地使用権の売却収入に頼る地方政府の財政も悪化している。

　　ＬＧＦＶが発行した債券の市場規模は９兆ドル（約1300兆円）。

この市場に対する懸念が高まっており、中央政府は返済能力の低い

発行体を効果的に救済し、信用収縮を回避するための措置を講じるよう動いている。

ＬＧＦＶの仕組みは
　　

地方政府はもともと銀行から借り入れなどが禁じられており、

そうした禁止措置を回避しながら資金を集めるためにＬＧＦＶが考案された。

　　ＬＧＦＶが調達した資金はインフラ整備に直接充てられる。

こうした借入金は企業債務に分類されるものの、投資家は

一般的に地方政府が最終責任を負うものと考えている。

2. ＬＧＦＶはなぜ重要なのか

　　ＬＧＦＶは、中国経済の急成長を維持するのに十分な

ペースのインフラ・公共サービス拡大を担保する政府の取り組みの

中心となってきた。2008年の世界金融危機時、中国政府は

４兆元（現在の為替レートで約80兆円）の景気刺激策を実施。

その後、ＬＧＦＶが急速に広がっていった。

3. 中国経済にとってどの程度重要か

　　国際通貨基金（ＩＭＦ）は、ＬＧＦＶの債務が

ここ５年間でほぼ倍増し、約66兆元に達したと推計。中国国内総生産（ＧＤＰ）

の半分強に当たる規模だ。Ｓ＆Ｐグローバル・レーティングの

データによれば、22年末のＬＧＦＶ本土債残高は約13兆5000億元で、

中国の非金融社債市場の約４割に相当する。

　　商業銀行の資産運用部門や保険会社、投資信託、証券会社、ヘッジファンドなど、

あらゆる種類の金融機関・会社がＬＧＦＶ債へのエクスポージャーを

抱えている。外国人投資家はＬＧＦＶを不透明で分析しにくいと

考えているため、ＬＧＦＶ債投資家の圧倒的多数は中国勢だ。

4. なぜＬＧＦＶのリスクが高まったのか

　　中国政府が多額の債務を抱える不動産開発会社に対し、

「３つのレッドライン」と呼ばれる借り入れ規制を20年に課し、

その結果、深刻な不動産不況が到来。それに伴い、地方政府の土地使用権売却収入が減少した。　

　　新型コロナウイルスのパンデミック（世界的大流行）に対応するための

支出急増も重なり、大多数の地方政府で財政が一段と悪化した。

　　調査会社ロジウム・グループが調べた約205都市のうち半数が昨年、

債務利払いの管理が困難になった。一方、中国国際金融（ＣＩＣＣ）の

リポートによると、22年には過去９年間で最多となる

平均３億9200万元の公的補助金がＬＧＦＶに支払われた。

5. 債務不履行に陥ったＬＧＦＶはあるのか

　　今のところない。最も苦境に立たされている地方政府でさえ、

債券の支払いを優先しているようだ。だが、一部のＬＧＦＶは

期限ぎりぎりの支払いをしており、債務返済の困難さを示している。

6. 政府は何をしているのか

　　中国共産党の最高意思決定機関である党中央政治局は７月の

会議で、地方政府の債務と不動産セクターへの支援について

成長促進を強調した。その後、低格付けの借り手を中心に短期の

人民元建てＬＧＦＶ債への需要が急増。投資家心理の変化を象徴する

のが、中国で最大級の債務負担を抱える天津市のＬＧＦＶが

８月に発行した15億元相当の債券に対し圧倒的な応募があったことだ。

ブルームバーグ・ニュースは８月、中国は省レベルの政府に対し、

ＬＧＦＶやその他の簿外発行体の債務を返済するため、

債券の発行を通じて約１兆元を調達することを認めると報道。

このプログラムは事実上、返済能力の低い発行体を救済し、

代わりに省政府に債務負担を転嫁することになる

中国最大級の国有銀行も救済に乗り出しており、信用力の

高い適格ＬＧＦＶに対し、大半の企業向け融資として一般的な

満期10年のローンではなく、25年ローンの供与を強化し始めたとブ

ルームバーグは先に報じている

中国人民銀行（中央銀行）はＬＧＦＶに低コスト資金をより

長期で提供するため、市中銀行と緊急流動性ツールを設ける

可能性があると中国メディアの財新が８月に伝えた

　　前例によれば、返済が滞ると、一部国有企業や

公的企業の借り入れコストが手の届かない水準まで急上昇し、

リスクも高まる可能性がある。ただ、状況が悪化すれば国が必ず助け

るという思い込みによる無謀な借り入れを抑制する取り組みを

中央政府が行っていることを踏まえると、ＬＧＦＶセクター全体が

救済される可能性は低いとみられる。

7. デフォルト以外のリスクは

　　懸念されるのは、多くの地方当局が借り入れ抑制を余儀なく

される段階に達しつつあり、中国経済をこれまで刺激してきた潤沢な

流動性が止まってしまう恐れがあることだ。

（出典：Bloomberg）

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-08-24/RZU9DWT1UM0W01

問題点と経済全体に広がる懸念は

問題となっているのは、LGFVの健全性です。準政府組織であるLGFVは、

債券の直接発行が認められていなかった地方政府の資金調達手段として

設立されました。足元では、LGFVの債券発行残高は10兆ドルに迫り、

その規模は中国のオンショア社債市場の半分近くを占めています。

そのため、このセクターの発行体（LGFV）が何か問題を

抱えている兆候があれば、投資家は警戒します。

実際、雲南省、広西チワン族自治区、貴州省、内モンゴル自治区などの

地方政府ではLGFVの債務問題への懸念が高まっています。

市場はこうしたリスクをすでに織り込んでいると思われ

今のところはは、それがより大きい地域やLGFVにまで

広がっている兆候は見られていないようです。

中国経済が減速する中で融資平台は「隠れ借金」として、

国際的に中国の地方財政に対する不信感が高まる要因となってきました。

まとめ

中国の不動産を発信とする経済後退懸念が

高まっているなかで、地方政府の実質資金調達手段

となっているLGFVへの懸念も高まっている

ようですが、現状は地方にとどまっているようです。

おそらく、中央の金融政策のはけ口として

QE政策がとられると予想されているようです。

The Epoch Times:中国経済が危機に直面している7つの理由は！