PEPPとAPPの違いとECBがテーパリングを決定した背景は
9月9日に開く次回の政策理事会で、コロナ危機に対応して導入したPEPP
(パンデミック緊急購入プログラム)のもとでの資産買い入れペースを
低下させる、テーパリングに着手するべきかどうかの議論を行われ、
その方向で決定されました。
ECB、PEPPの購入ペース減速-ユーロ圏経済の回復は堅固 https://t.co/KPrjKxYckx
— ブルームバーグニュース (@BloombergJapan) September 9, 2021
ECBが3月の理事会でパンデミック緊急資産買い入れプログラム(PEPP)
の大幅買い入れ強化を発表して以降、ユーロ圏の景気回復期待の高まりと
インフレ加速を受け、近い将来に買い入れペースの縮小(テーパリング)を
開始するとの観測が高まっています。その後、ECB高官による相次ぐ
牽制発言で早期のテーパリング観測は後退し、6月の理事会では結局、
2021~22年の景気と物価の見通しを大幅に上方修正し
短期的な景気のリスク判断を従来の下振れ方向から中立に引き上げたにも
かかわらず、今後3ヶ月もPEPPの大幅な買い入れペースを維持する
方針が決定されました。また、その他の政策変数や
フォワード・ガイダンスも据え置かれた。
APPとは
APPとは資産購入プログラムのことで、
従来の資産購入プログラム(APP)を月額200億ユーロで継続する
方針も示しています。
PEPPとは
PEPPとは、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)
のことで、ECBは、PEPPの購入ペースを10-12月(第4四半期)
に減速させることを今回決定しました。いわゆるテーパリングです。
このプログラウは、新型コロナ発生後、ECBが急遽流動性を
供給するために設立したプログラムです。
PEPPテーパリングの背景は
ラガルド総裁は、景気支援の段階的な縮小を意図する動きではないと強調しました。
総裁は9日、政策発表後の記者会見で購入減速について、
「テーパリングではない」と言明しています。「PEPPを向こう
3カ月について微調整する」という決定だと説明しました。
ECBの発表によると、政策委員会は購入の「ペースをやや減速させる」
ことを決定しました。第2、3四半期は月額約800億ユーロ(約10兆4000億円)
の購入を続けていました。ロイター通信によると、新たな購入目標は
月額600億~700億ユーロに設定されました。
総裁はユーロ圏経済の回復が「ますます進展している」と述べ、
購入を減速させても回復が続くことに自信を示しました。
同時に、新型コロナウイルスのデルタ変異株の世界的拡大が
経済の完全な再開を遅らせる可能性も指摘しました
ECBはPEPPの総額1兆8500億ユーロを維持したほか、
2022年3月まで、あるいは必要ならそれ以降まで継続すると確認しました。
ラガルド総裁は、PEPPについて12月に包括的な議論を行うと述べ、
緊急措置の終了方法と時期の議論はまだ機が熟していないことを示唆しました。
ECB、今後も必要な支援を継続へ=ラガルド総裁 https://t.co/1lYwKSQ9Zt pic.twitter.com/BgvzY1JpWq
— ロイター ビジネス (@ReutersJapanBiz) September 10, 2021
9月会合で今後3カ月の購入ペースを決めたことで、12月16日の会合が
PEPPの先行きに関する重大な決定の場となります。ラガルド総裁に
よれば今回の決定は全会一致だったが、インフレの脅威を巡る認識は
政策委メンバーの間で異なっていることが明らかで、コンセンサスを
維持するのは難しそうです。
この日公表された最新の経済予測では、今年の成長率とインフレ率は
上方修正されたものの、23年のインフレ率予想は1.5%で、
ECB目標の2%を依然として下回る見込みです。
サプライチェーンの目詰まりと新型コロナウイルス感染再拡大が回復を脅かし、
中期的なインフレ率はECB目標の2%を下回り続ける公算が大きいものの、
一部の政策委メンバーは超緩和的な政策の長期化によるリスクを指摘しています。
ECBはユーロ圏の資金調達環境を政策決定の主要な目安とします。
まとめ
ECBは先日の理事会で、中銀預金金利をマイナス0.5%で据え置きました
インフレ見通しが持続的に2%の水準を維持し、基調的な物価圧力も
この目標に一致するまでは利上げをしないと表明しており、PEPPの購入額
の現カウを発表しましたが、APPの購入額を含め、緩和政策の継続を
強く示唆しています。当面はインフレの動向とコロナの影響をみながら
難しいかじ取りがECBに要求されることが考えられます。
ECBのパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)とFRB資金供給プログラムの違いからみる今後のユーロドル相場予想は?