NPL(non performing loan)、ABS投資のオルタナティブファンドの組成とその資金ソースは!
NPL投資とは文字通りnon perming loan (不良債権投資)
のことを意味し、それらのプライベート・デットに投資する
オルタナティブ投資ファンドが注目されています。
目次
NPL、ABS投資ファンド組成の手順
スキームの策定
運用資産や投資家層を考慮し、最適なスキームを選択します。
税制や法令を踏まえ、慎重に検討する必要があります。
適格機関投資家等特例業務の検討
コストや迅速性の観点から、適格機関投資家等特例業務の適用を検討します。
ファンド契約書の作成
投資方針、運用期間、手数料体系などを定めた契約書を作成します。
運用体制の整備
投資委員会の設置や利益相反管理体制の構築を行います。
シードマネーと資金調達
シードマネーは、ファンドの立ち上げ時に必要となる場合が多いです。
以下の方法で投資資金を集めることができます:
・適格機関投資家からの出資
銀行、保険会社、年金基金などからの出資を募ります。
プロ投資家からの出資
ベンチャーキャピタルや富裕層個人投資家などからの出資を募ります。
一般投資家からの出資
適格機関投資家等特例業務の要件を満たす範囲で、一般投資家からも出資を募ることができます。
・自己資金の投入
ファンド運営者自身が一部資金を拠出することで、投資家の信頼を得やすくなります。
投資資金を集める際は、以下の点に注意が必要です:
投資家に対して適切な情報開示を行う。
金融商品取引法に基づく説明義務を果たす。
犯罪収益移転防止法に基づく本人確認を実施する。
ファンド組成には複雑な法的要件や手続きが必要となるため、
専門家のサポートを受けながら進めることが推奨されます。
ライベートデットファンドや NPLs (不良債権)に投資するファンドは、
通常以下のような形式で投資を行います:
個人ローンへの投資
ローン債権の購入
既存の個人ローン債権を金融機関から購入し、その債権からの返済を受け取ります。
オリジネーション・パートナーシップ
フィンテック企業や貸金業者と提携し、それらの企業が実行したローンの一部を
ファンドが購入します。
証券化商品への投資
個人ローンを裏付けとした証券化商品(ABS)に投資します。
NPLsへの投資
不良債権の一括購入
金融機関から不良債権のポートフォリオを割引価格で購入します。
特別目的会社(SPC)の活用
NPLsを保有するSPCの持分や債券に投資します。
債権回収会社との提携
専門の債権回収会社と提携し、購入したNPLsの回収を委託します
NPLs、投資の特徴
レバレッジの活用
ノンリコースローンなどを活用し、投資家からの出資金の1〜2倍程度の資金
を調達して投資規模を拡大します。
分散投資
多数の個人ローンやNPLsに分散投資することでリスクを軽減します。
プロフェッショナルな運用
専門的な知識を持つファンドマネージャーが投資判断や債権管理を行います。
これらのファンドは、通常直接個人に融資するのではなく、既存の債権を購入したり、
オリジネーターと提携したりする
ことで間接的に個人ローン市場に参加します。これにより、規制上のリスクを
軽減しつつ、専門性を活かした投資を行うことができます。
NPL投資のしくみの例
銀行から100円を借りているが返済が滞っている案件があるとします。
資産価値がありそうなものは銀行が担保に取っており10円と評価している不動産のみ
とします。
銀行は100円貸していますが、最悪不動産を叩き売らせて10円返してもらう予定
だと仮定します。その場合を考慮して90円分引当を計上済みなので
会計上の損失を計上しており、銀行内部では10円の価値だと思っている状況です。
一方債務者はそんなことは知らないので100円の債務義務を負っています。
そこで投資ファンドがあらわれ、債務者所有の不動産には10円以上の価値が
ありそうだと思っており、且つ債務者は本気を出せばもうちょっと稼ぐ力が
あると思っていると仮定します。
この状況で、投資ファンドが銀行に「不良債権ありませんか」と営業に行きます。
銀行は不良債権比率が一定以上になってしまうと金融庁に怒られる等々色々な
理由があり、良い値段で買ってくれる人がいるなら債権を売却しても良いと思っています。
そして、債務者に貸している債権の資料を投資ファンドCに見せて
売却値段交渉を行います。
投資ファンドは、DDを行い、資料見たり、不動産の評価を自分で見直したり、
外部の不動産鑑定士にお願いしたりして、債務者の返済能力・資産価値を見直します。
その結果 債務者の所有不動産の価値は20円、そして不動産の価値とは関係なく
その債務者は本気を出したら年間で少なくとも5円稼ぐことができ、それが
3年は続きそうだと思える人だと分かりました。
その情報を持って、投資ファンドは考えます。
まず、不動産は無くても債務者の生活と今後の仕事には支障ないことを確認し
いずれ任意売却か競売で売却させよう。交渉や売却手続きを考えて余裕を持って
2年くらいの間に20円回収予定をたてます。
すると、不動産売却と自力返済の合計で、1年目5円、2年目25円の合計30円は
返済されるとの予想がたてると、回収予想額をIRR 20%で割り引き 約21.5円
との価格を設定します。
そこで投資ファンドは銀行へ「20円で買いますよ!」と言うわけです。
銀行は10円だと思っていたものが20円で売却出来るので10円の利益を獲得。
不良債権処理も進んで大喜び、ということになります。
そして投資ファンドは債権を購入し債権者となったところで債務者に言います。
新しい債権者の投資ファンドです。現在100円の借金があるわけですが、
これから3年間で40円返してくれませんか?具体的には、①不動産を2年以内に
20円で売却、②年間5円ずつ2年間返済、③そして2年後に他の銀行から10円を
借りてきて返済です。③まで済んだところで我々の債権は全て放棄致します。
すると、Aくんは2年後には③の借金10円だけの綺麗な体で再出発できます。
年間5円返せる人になっていれば、最後に残った10円の借金も返せるはずです。
そして、「上手くいけば40円回収。そこまで上手くいかなくても不動産が
売れさえすれば20円は回収できるので損はしないだろ。最低でもDD時の
目論み通りの30円は回収目標をたてます。
という発想で投資ファンドは回収/再生フェーズに突入していくわけです。
投資ファンドは20円で買った債権から30~40円回収して10~20円の儲け、
債務者は100円あった借金が2年間の頑張りで10円になって再出発となります。
債務者が個人ではなく会社としての債務者であれば、ちゃんと
事業再生や不採算事業撤退やらコストカットとかも織り込んで、
キャッシュフローの向上と返済額の増額やリファイナンス
(上記③のように他から借りてきて既存債務を返済すること)などを
考えていくと、ハゲタカ的企業再生案件となるわけです。
中には当然何の価値も見いだせない債務者もいたりしますが、
それはそれでDDで「本当に無価値なのか?」という確認を行い
1円で買います。そして、1円で買ってみたら意外と
100万円回収出来ました、みたいなこともあったりします。
色々なケースはありつつも共通しているのは、債務者の返済能力の
向上や担保資産の価値のアービトラージを狙って儲ける、というのが
不良債権投資の根幹になります。
まとめ
今回は、NPL投資(不良債権)をおこなっているファンドの組成やしくみ
などについて調べてみました。
オルタナティブ投資のひとつとして以前は注目されていましたが
現状の投資環境はまちまちのようです。