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GPIFの投資規模と10%の戦略変更でドル円に及ぼす影響は!?

先日片山財務大臣が、円安を阻止するために

GPIFの投資戦略について言及しました。

これは、口先介入のひとつのようにも見えますが

実際にGPIFが海外資産比率を10%引き下げた場合

にどのようなインパクトがあるのか調べてみました。

① GPIFの投資規模

GPIFの運用資産は現在約300兆円です。

海外資産は

  • 外国株
  • 外国債券

合わせて約50%です。

つまり

約150兆円

海外資産を保有しています。

② 10%引き下げとは?

ここで注意ですが、

「海外比率を10%下げる」

とは

50%

40%

です。

つまり

約30兆円

海外資産を減らすことになります。

これは非常に大きな金額です。


③ 30兆円を円転したら?

30兆円

約2,000億ドル
(1ドル150円換算)

となります。

この金額だけ見ると

「すごい」

と思います。

しかし

問題は

いつ売るのか

です。

④ ドル円市場はどれくらい大きい?

世界のドル円市場は

1日あたり

数千億ドル規模

が取引されています。

現物だけではなく

  • スワップ
  • 先物
  • オプション

を含めると

さらに巨大です。

つまり

2,000億ドルという金額も

数か月〜1年程度かけて実施すれば

市場全体から見ると吸収可能な規模です。

⑤ 短期的インパクト

一方で、

もし

「来週30兆円全部売ります」

となれば

当然マーケットはパニックです。

一時的には

数円から十円近い円高

になっても不思議ではありません。

しかし、

実際にはそんな運用はしません。

GPIFは

何か月、

あるいは何年もかけて

徐々に実施します。

⑥ なぜ恒久的な円高にならない?

例えば

GPIFが30兆円円転したとします。

その時は

円買い

が発生します。

しかし、

その後は?

終わりです。

つまり

一回限りのフロー

なのです。

一方で

ドル円は毎日

  • 輸出
  • 輸入
  • 生保
  • 商社
  • ヘッジファンド
  • CTA
  • NISA
  • 海外M&A

など

膨大なフローがあります。

したがって

GPIFの円買いは

一度終われば

その効果も徐々に薄れていきます。

⑦ 市場が本当に見るもの

実は市場は

「30兆円」

よりも

こちらを見ます。

今後10年間、
GPIFは毎年海外投資を減らすのか?

もし

毎年

2〜3兆円ずつ

国内へ戻す

となれば

構造的な円高要因になります。

逆に

一回だけなら

イベント終了後は

市場は次の材料へ移ります。

今後をみるうえで重要な点は

私は今回の話で

一番重要なのは

「ストック」ではなく「フロー」

だと思っています。

例えば

日本には

約600兆円を超える対外純資産があります。

しかし

毎年

新たに海外へ投資する金額

(フロー)

のほうが

為替にははるかに重要です。

GPIFも同じです。

現在

毎年

数兆円規模で

海外へ投資しているなら、

その流れを止めるだけでも

円安圧力はかなり弱まります。


為替にとって重要なことは

昨日からの一連のご質問を通じて、私は一つ感じたことがあります。

あなたは「国際収支」「キャリートレード」「GPIF」を一つの資金循環(フロー)の問題

とらえることが重要です。

「金利差だけで円安になる」といった説明ではなく、

  • 経常収支
  • 金融収支
  • 年金資金
  • NISA
  • キャリートレード

を一つの資金循環として見る視点です。

この視点に立つと、「なぜ日本は世界最大級の対外純資産国なのに円安なのか」という、

一見矛盾して見える現象も理解しやすくなります。

ただし、最初に結論を申し上げると、

 

① 昔の日本と現在の日本

1980~1990年代の日本では、

日本企業は国内に積極的に投資し、

家計も国内預金や国内株式を中心に資産を保有していました。

つまり、

国内に投資した方が魅力的だった

わけです。

しかし現在は、

企業も家計も

「海外の方がリターンが期待できる」

と考えるケースが増えています。

例えば、

  • 新NISAで米国株や全世界株を購入
  • 生保による海外債券投資
  • 企業による海外M&A
  • GPIFなどの海外分散投資

これらはすべて金融収支のアウトフローです。

なぜ海外へ向かうのか

ここにはいくつか理由があります。

(1)金利差

一番分かりやすい理由です。

例えば、

日本国債 1~2%

米国国債 4~5%

なら、

海外資産を保有したくなります。

(2)成長率

例えば、

米国企業の利益成長率

日本企業の利益成長率

を比較すると、

海外に期待する投資家が多いのも自然です。

(3)人口

日本は人口減少局面です。

これは

国内市場の縮小

を意味します。

したがって、

企業も投資家も

海外へ目を向けます。

(4)財政リスク

日本は政府債務残高が非常に大きく、

将来的に

  • 増税
  • インフレ
  • 財政規律

などを懸念する投資家は一定数います。

その結果、

「資産を海外にも分散しておこう」

という考え方は確かに存在します。

ただし、

現時点では

「財政リスクだけ」が海外投資の主因ではない

と私は考えています。

フローとして見ると

例えば、

毎年

10兆円

海外へ資金が流れるとします。

その理由は

  • 金利差
  • 成長率
  • 財政リスク
  • 円安期待

様々です。

為替市場から見ると、

理由はどうであれ、

「円が売られ、外貨が買われる」というフロー

になります。

つまり、

市場にとって重要なのは

なぜ資金が動いたか

だけでなく、

実際にどちらへ流れたか

です。

 円安期待が円安を呼ぶ

ここは市場心理の世界になります。

もし投資家が

「将来も円安だろう」

と思えば、

海外資産を買います。

すると

円売り

円安

「やっぱり円安だった」

さらに海外資産を買う

という循環になります。

これは

経済学では

自己実現的期待(self-fulfilling expectation)

の一例と考えることができます。

もちろん、これだけで為替が決まるわけではありませんが、期待と

フローが互いに影響し合う現象は実際に起こります。

⑤ 私が最近感じる構造変化

私は、ここ数年で一番大きな変化は、

「日本人自身が円資産だけでは不安だから海外にも分散しよう」と考えるようになったこと

だと思っています。

昔は

「円預金が安全」

でした。

しかし現在は、

  • NISA
  • オルカン
  • S&P500

が広く普及し、

海外分散投資がごく一般的になりました。

これは制度面(新NISA)や投資教育の普及も大きく影響していますが、

結果として構造的な外貨需要を生み出しています。

⑥ ただし、「国力低下=円安」と単純化はできない

ここだけは慎重に見たいと思います。

例えば、スイスは小国ですが通貨は非常に強く、逆に高い政府債務を抱えていても

自国通貨が急落しない国もあります。

為替は、

  • 金利
  • インフレ
  • 経常収支
  • 金融収支
  • 政策
  • 市場心理

などが複雑に絡み合って決まります。

したがって、

「日本の国力が落ちたから円安になった」

というよりは、日本の相対的な投資魅力や期待リターンが海外より

低いと見られ、その結果として資金フローが海外へ向かい、

それが円安圧力の一因になっている

という表現の方が、現在の実態に近いと私は考えます。

私は、ここ数日のご質問を通じて、一つ非常に興味深い流れを感じています。

 


私が為替を見るときの考え方

もし私がドル円を分析するとしたら、毎回次のような順番で整理します。

  1. 金利差はどう動くか。
    • 日米実質金利
    • 中央銀行の政策スタンス
  2. 資金フローはどちらへ向かうか。
    • 経常収支
    • 金融収支
    • GPIF、生保、NISAなどの動き
  3. 市場は何を織り込んでいるか。
    • 円安期待か
    • 円高期待か
    • リスクオン・オフか
  4. 構造的な要因は変わっていないか。
    • 財政
    • 人口動態
    • 生産性
    • エネルギー収支
    • 海外投資収益

この4つを重ねて見ると、日々のニュースに振り回されにくくなります。

まとめ

ドル円の今後を占う点で最も重要な点は以下の3つと考えます。

  • 日銀がどこまで利上げを進められるのか。
  • 日本の家計・機関投資家の海外投資が今後も続くのか。
  • 海外投資家が「日本のリスクプレミアム」をどう評価していくのか。

これらは、今後数年のドル円相場を考えるうえで重要なテーマになると思います。

国内の海外ETF投資と国際収支の関係と日本国債市場と財政が受ける影響は?

 

プロフィール


Yoshi

こんにちは、Yoshiと申します。
約20年に及ぶ外資系銀行でのトレード経験を活かして金融情報を独自の視点で発信しています。FX市場に携わって約20年経ちますが、現在は他の金融市場(株式、コモディティ、暗号通貨)の関連性を含めて独自目線で情報提供しています。
主な資格:
米国公認会計士合格(ワシントン州)
お仕事依頼などの連絡先:
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