FRBの債券再投資の停止とテーパリング観測が浮上すると市場へ影響は?
今月の利上げが確実視されていますが、
FRB幹部らは、4.5兆ドル規模のバランスシートの縮小を開始するまで
まだしばらく短期金利の引き上げを続ける計画であることを言明して
きています。
足元で短期債と長期債の利回りの差が縮まりつつあるのは、
FRBのこの方針が影響している可能性があります。短期金利を
引き上げる一方で満期が到来した保有債券の償還金を再投資し
続けることにより、FRBは長期の借り入れコストを低く
抑えながら短期の借り入れコストを上昇させています。
金利曲線のフラット二ングが招く影響あh
市場が利回り曲線を注視しているのは、この曲線が金融システム
の信用創造プロセスを支えているからです。金融機関は低い金利
で短期資金を借り入れ、それを高い金利で長期間貸し出すことで
利益を得ています。長短スプレッドが縮小すれば、銀行は融資の
収益をあげにくくなります。
現状が通常の利上げによるフラット化と違うのは、FRBが利上げと
保有長期債の再投資を同時に行うことで短期金利を上げながら長期金利を
下げるという両方向の圧力を加えていることです。
いずれは再投資停止も視野に?
イエレンFRB議長は1月の講演で、FRBの保有債券は
長期金利に大きな下押し圧力を与え続ける、とした上で、FRBの
バランスシートは将来的に縮小するとの見方が市場に広がる中、
この圧力はいくらか和らぎ始めていると指摘しています。
14年のQE終了以来、FRBは満期を迎えた保有債券の償還金を再投資し、
バランスシートを一定の大きさに維持してきてきました。FRB幹部らは、
バランスシートの縮小を始める際にはゆっくりとしたペースで
段階的に進める考えで、保有資産を売却するのではなく、償還金
の再投資を中止するか減速する可能性が高いと話しています。
債券再投資を停止する影響は
バランスシートを縮小し始めれば利回り曲線がスティープ化
する可能性はあります。
一部には短期金利引き上げの代わりに、あるいはそれと合わせて
バランスシートの縮小を利用すべきだという意見も出ています。
しかし、さまざまな不確定要素を理由に、FRB幹部は
この戦略を取るつもりがないことを明らかにしています。短期金利を
第一の政策手段としたいのが現状です。
FRBはある程度短期金利を引き上げた後で、その償還金の再投資を
辞めることで徐々に金利体系も自然体に持ち直したいとの
意向があるようですが、なんといっても4.5兆ドルのバランスシート
の規模を考えると、FRBがストップすることを示唆したあたり
から長期金利が一気に上昇する可能性があります。
その時の米国株価への影響はマイナスに働き、ドルも不安定になる
ことが予想されます。