ESGのダブル・マテリアリティの意味とJPモルガンの解釈は!
ESG投資がここ数年間ずっと注目をあびています。
ESG投資は企業の売上や成長性など、数値で把握しやすい要素(財務情報)ではない、
非財務と呼ばれる分野の要素も加味して投資先を選ぶという点で、
ESG投資は従来の投資手法とは大きく異なっています。
そこでその判断基準ともなりえる、ESGのマテリアリティについても
議論となっています。
ESGとは、環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の
英語の頭文字を合わせた言葉です。企業が長期的に成長するためには、
経営においてESGの3つの観点が必要だという考え方が世界中で広まっています。
よく「SDGs」という言葉といっしょになりがちですが
SDG’sとは、国連は、2030年までに解決すべき国際社会共通の目標として、
「SDGs(持続可能な開発目標)」を採択したものです。
「SDGs」は17の個別目標で構成されたものです。
今回はESGの「マテリアリティ」に焦点を
あてて調べてみました。
「マテリアリティ」とは
非財務情報開示の枠組みの中においては、マテリアリティあるいはマテリアルな事項とは、
企業にとっての重要な事項といった意味で使われます。マテリアリティという言葉の代わりに
日本語で「重要事項」と表記されることもあり、これをみると馴染みのある方も
多いかと思います。
企業にとって何がマテリアリティ(=重要事項)なのかという点について、
見解が分かれています。例えば、EUの「非財務報告ガイドライン」(2019年)では、
マテリアリティには「財務的マテリアリティ」と「環境・社会的マテリアリティ」
の二つがあると示されます。
近年になって非財務情報開示に関して様々な枠組みが登場しており、
マテリアリティをどのように定義するかについて統一した見解はありません。
前述のEUガイドラインは、財務的マテリアリティと環境・社会的マテリアリティの
双方を注視する立場であり、これをダブル・マテリアリティと呼びます。
一方、マテリアリティは企業財務に与える影響に限定してとらえるべきで
あるという立場もあり、これはシングル・マテリアリティと呼ばれるようです。
シングル・マテリアティ派とダブル・マテリアリティ派との立場の違いは、
非財務情報を開示する相手を投資家に限定するか、マルチステークホルダーと
広くとらえるかの相違です。
「財務的マテリアリティ」とは
財務的マテリアリティとは、企業の中長期的なパフォーマンスや
立場を理解する上で必要な事項となります。主に投資家が必要な情報です。
地球温暖化にともなう気候変動などの要因は、企業の将来の財務状態や
事業パフォーマンスに大きなインパクトを及ぼす可能性があります。
また企業の将来の価値創造にとっても重要なテーマです。こうした情報は
投資家の意思決定を大きく左右するものであり、マテリアル(重要)な
事項と見なされます。このように投資家の目線でマテリアティを
解釈する立場は、SASBスタンダードやTCFD勧告等の中で示されています。
「環境・社会的マテリアリティ」とは
環境・社会的マテリアリティとは、企業の事業活動が環境や社会に
及ぼすインパクトを理解する上で必要な事項という解釈です。消費者、市民社会、
従業員、投資家など幅広い階層の人々が必要とする情報となります。
人権へのインパクトを含む、経済、環境、人への組織の最も重大なインパクトを反映する項目が、
当該企業にとってのマテリアル(重要)な事項と見なされます。
このように幅広い人々(マルチステークホルダー)の目線で
マテリアティをとらえる側の代表は、GRIスタンダードです。
出典:https://note.com/idcj_sdgs/n/n082c0221d073
JPモルガンのESGの解釈は
JPモルガン・チェースは、ESG(環境、社会、企業統治)の解釈として、
「ダブルマテリアリティー」の考え方を支持している。
ダブルマテリアリティーとは、環境・社会が企業に与える財務的な影響(財務的マテリアリティー)と、
企業活動が環境・社会に与える影響(環境・社会的マテリアリティー)の両方を重視しようとする考え方だ。
この考え方は、ESGの適用方法の変化につながる可能性がある。
「ダブルマテリアリティー」の考え方は、JPモルガン・チェースが顧客に提供する
商品に取り入れられている。利用する顧客はESG関連のファクターが事業や
投資にもたらすリスクだけでなく、企業が環境や社会正義、優れた統治を妨げる
リスクについてもスクリーニングすることができる。
これは多くの市場関係者にとって、ESGの定義を現在の適用範囲から
拡大する考え方となる。
例えば、MSCIのような評価会社は「ダブルマテリアリティー」に基づいて
評価をしていない。また米国の金融規制当局は、ガイドラインを設ける際に
財務的マテリアリティーのみを考慮するようプレッシャーを受けている。
だが「そうした狭いESGの定義は、存続しない」と、
JPモルガンの欧州・中東・アフリカ(EMEA)担当ESG調査共同責任者で
新ツールの設計に携わったジャングザビエ・エッケル氏は指摘する。
同氏は「世界共通の価値を守るグローバルなサステナブル会計の枠組みが現れるまで、
『ダブルマテリアリティー』の考え方は必要だ」とインタビューで説明。
「財務的マテリアリティーだけに集中した議論は、そうした会計の枠組みが
存在する場合にしかできない」と述べた。
国際サステナビリティー基準審議会(ISSB)と緊密に連携する
グローバル・リポーティング・イニシアティブ(GRI)は、法域をまたぐ形で
「ダブルマテリアリティー」の概念を財務会計の手法に生かそうとしていることから、
JPモルガンの新たな取り組みに注目している。
「効果的なビジネス上の意思決定や投資戦略を語る上で、サステナビリティー基準の
重要性が増しているのは、これまでも明白だった」とGRIの
チーフエグゼクティブ、エルコ・ファン・デル・エンデン氏は指摘する。
EUのESG規制の一部に「ダブルマテリアリティー」はすでに、
欧州連合(EU)のESG規制の一部となっている。だが、
米国がこの概念を取り入れるかどうかは、まだ分からない。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のシニアESGアナリスト、ロブ・デュボフ氏は、
環境や社会に関連する問題は財務面で徐々に重要性を増す可能性があり、最終的には抵抗勢力も
「ダブルマテリアリティー」がリスクを評価する上で必要な手法と考えるよう
迫られるかもしれないと述べた。
「企業が世界に与えるインパクトに対して、政策立案者や消費者などのステークホルダーが
何らかの反応を示しそうな場合、いわゆる『シングルマテリアリティー』に基づく分析は、
その反応が投資の将来のリスクや機会にどう影響するのか説明できなければならない」
と同氏は指摘した。
シングルマテリアリティーとは、重要事項は財務的マテリアリティーに限定して
捉えるべきであるとする考え方だ。
デュボフ氏によると米国の法律は明確で、受託者がESGの問題について説明しなければならないのは、
顧客のポートフォリオのリスクを管理する上で必要だからであり、「正しい行動だからではない」
という。同氏は「この優先順位がすぐに変わるとは考えていない」と語った。
(出典:ブルムバーグより)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-27/RIL3TXT1UM0W01?srnd=cojp-v2
まとめ
このように新しい投資方法が取り入れられた背景によって
基準、規範の議論がひろがっています。
一般的にESGで高評価を受けている企業は「収益性」「PBR(株価純資産倍率)の平均値」
が高いとされ、財務指標も安定していると言われています。
社会や投資家にESGへの関心がさらに高まれば、企業価値の増大に
つながっていくとされているのですが、そのマテリアリティについて
議論についても、これから広がっていくものと思われます。
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