国内の海外ETF投資と国際収支の関係と日本国債市場と財政が受ける影響は?
日本の個人投資家によるETFを通した海外のインデックス投資が
ここ数年活発化していますが、これによる、国際収支、経常収支
そして、日本の国債市場への影響について調べてみました。

国際収支(日本 → 米国 ETF 投資)の扱い
① “買うとき” → 資本収支(金融収支)の「証券投資(株式等)」
で資本流出(赤字)となります。
-
日本の個人が米国ETFを買う=米国の株式を購入して外貨資産を保有する
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→ 日本から資金が流出するため、金融収支(資本収支):マイナス(資本流出)
-
正確には、**証券投資(株式・投信)**の「資産の増加」として記録されます。
※「国際収支」で一般に言う“経常収支の黒字/赤字”には 投資そのものは関係しない 点が重要です。
② “配当を受け取るとき” → 経常収支の第一次所得収支の黒字
→ 米国から日本への所得の受取り(黒字) として計上。
つまり
ETF保有中は 分配金が入る限り、日本の所得収支は黒字に寄与 します。
③ “売却するとき” → 資本収支(金融収支)で資本流入(黒字)
価格変動による 売買益は国際収支には反映されません。
(国際収支はキャッシュフローの記録で、評価損益は無関係)
■ まとめ(時系列で見ると)
| 日本人が米国ETFを… |
国際収支上の扱い |
| 購入する |
金融収支:株式投資で「資本流出」 |
| 保有して配当を受ける |
経常収支:第一次所得収支が「黒字」 |
| 売却して資金を戻す |
金融収支:資本流入 |
■ 補足:日本の経常収支を押し上げているのは「第一次所得収支」
実は近年、日本が経常収支黒字を保っている最大の理由は、
個人・企業・政府の対外資産(海外に保有する株式・債券・直接投資)からの収益=第一次所得収支です。
ETFの配当もまさにこれに含まれます。
日本人が米国株インデックスETFに投資した場合、購入時は資本収支で資本流出、
配当受取りは経常収支の第一次所得収支の黒字、売却時は資本流入、という扱いになります。
したがってご認識の通り、配当がある限り経常収支にはプラスに働きます。
日本国債市場への影響は
■① 日本の貯蓄は海外証券投資にシフトしている
→
その通り近年、日本の家計・金融機関は明確に海外資産へシフトしています。
- 国内は ゼロ金利・低成長・低インフレ
- 海外(特に米国)は 高金利・高成長
という構造から、日本の貯蓄 → 海外株・海外債券へ流れやすい。このため、家計や
生保の「国内国債保有比率」は長期的に低下しています。
■② 「日本人が日本国債を買い支えるには限界がある」→ 基本的にその通り本来、
政府債務を支えるのは**民間貯蓄(銀行・保険・家計)**ですが、
- 家計の金融資産は増加ペースが鈍化(高齢化で取り崩しも増)
- 銀行は国債を大量には持てない(資本規制・金利リスク)
- 保険・年金はより収益性を求めて海外が中心
つまり、従来の「国内資金で国債を吸収するモデル」は限界が近づいている。
この「穴」を埋めてきたのが 日銀の大規模国債買入 です。
■③ 「では、日銀がもっとお金を刷れば解決?」→ 短期的にはYESだが、
長期的にはNOこれは非常に誤解の多い部分なので丁寧に説明します。
▼短期的には可能(=実際そうしてきた)実際、日本は過去10年、
- 市場が国債を買い切れない分を
- 日銀が異次元緩和で吸収
してきました。この意味では短期的には、「日銀が刷れば国債問題を
先送りできる」のは事実。
▼しかし長期的には限界がある(理由は3つ)① 日本国債の市場機能が喪失する
日銀が国債の約半分を保有すると、
- 金利が市場で決まらない
- 日本円の価値の“信頼性”が低下
- 為替が急落(円安)
→ 国債・通貨への信認問題につながる。
② インフレが制御できなくなるリスクお金を刷る=国債を日銀が買い続ける
ということは政府支出を通貨で直接ファイナンスするに近い。これは極端にいうと
財政ファイナンス に近い行為。
- 需要 > 供給の局面でこれを続けると→ 通貨価値が崩れ、インフレ・通貨安が進む
今は日本が低インフレ体質だから表面化していませんが、構造が変わるとリスクは増大。
③ 海外投資家が国債を買わなくなる(=円の国際信認低下)海外からすると:
- 市場価格で金利が決まらない
- 日銀が際限なく買っている
- 政府債務 GDP 比 260%(世界最悪)
→ 円建て資産の“安全資産”としての魅力が弱まる。
■④ 結論:
日銀がお金を刷り続けることは「短期の延命」にはなるが、「根本解決」
にはならない。日本国債を安定的に消化するには、
- 成長率の引き上げ(税収増)
- 社会保障費の抑制
- 歳出効率化
- ある程度のインフレ維持(実質負担軽減)
- 富裕層の資金還流・国内投資の魅力向上
などの 総合戦略 が必要。
■⑤ 補足:では“破綻リスク”は高いのか?「破綻=デフォルト」という意味では
極めて低い。通貨発行権のある国は名目債務の支払い不能にはなりません。
日本の財政が受ける影響は
「国債の9割以上を日本人(広義には国内勢)が保有しているから、
財政ファイナンスしても問題ない」という主張は、以前から一部の
学者や政治家が言っています。しかし、これは
論理的に破綻している部分 が多いです。わ
■その主張は「半分だけ正しくて、半分は危険な誤解」
▼正しい部分(過去の日本には当てはまった)
- 国内勢が国債を大量に保有
- ゼロ金利・デフレ
- 通貨への信頼が強い
- 資本逃避が起きにくい
この条件では 政府債務が増えても、金利は上昇しなかった
(実際、2010〜20年代前半の日本がこれ)
しかし、
この“過去の条件”が今後も続く前提で議論している点が、根本的な誤り。
以下の理由でこの主張は間違っています。
■間違い①「保有者が国内勢なら信用リスクがない」という誤解
「信用リスクがない=デフォルトしない」という議論は半分正しいですが、
実際のリスクは
デフォルトでなく“通貨価値の崩壊(円の暴落)” です。
●国内勢が保有していても、円の信認が落ちれば
→ 国債価格が下がる(長期金利が上がる)
→
円安が進む→
インフレが発生→ 資産の目減りを嫌い、国内勢が国債を売る**つまり、
保有者が国内か海外かは本質ではない。
問題は「通貨の信用が維持されるかどうか」。
国内が保有していても、信用低下は起こる。
■間違い② 「日本人は絶対売らない」という誤った前提
国内保有と言っても、その実態は:
など「規制下で強制的に持たされていた金融機関」が保有しているに過ぎません。しかし今後は:
●銀行:金利リスクで国債保有を縮小
●保険:海外債券へシフト
●GPIF:すでに国債比率を大幅低下(25%→10%台へ)
つまり、
“国内保有だから安定”という前提が既に崩れている。
だからこそ日銀が大量購入で穴埋めしている。
■間違い③ 「日銀が無限に国債を買っても副作用がない」という誤り
これが最大の誤りです。学者の中には「円は自国通貨だから無制限に刷れる。
よって信用リスクはない」という人がいます。しかしこれは 理論が古い
(1990〜2010年の日本デフレ時代の発想)。実際には、
●日銀が大量買入 → 国債市場の価格形成が消滅
●金利が市場で決まらない → 海外投資家の信認低下
●円安が急進
●輸入インフレが定着
●国民生活が圧迫(購買力低下)
●最終的に日銀は買い続けられなくなる(出口が危機化)
→ 結果として“通貨の信認危機”が発生する可能性がある。これは「デフォルトとは違うが、実質的な財政危機」。
■間違い④ 「日本の対外純資産が大きいから安全」という議論の誤解
これは正しいが、同時に危険な視点。たしかに日本の対外純資産は世界最大ですが、
- これらは海外通貨建て(ドル資産)
- 国内の国債や日本円の信認が崩れても、海外資産は守られる
- それはつまり円から外国資産への逃避が進むということでもある
つまり対外純資産が大きいほど、
円安・海外資産シフトの圧力が高まる構造でもある。
これを安全性の根拠にするのはむしろ逆効果。
■間違い⑤ 「インフレは制御できる」という誤解
財政ファイナンスを続けた国(例:英国70年代、イタリア80年代等)は
最終的に
通貨安→インフレ→金利上昇 を経験しました。国内保有が中心でも同じです。
国内保有率が高かった国での通貨危機の例
- アルゼンチン
- トルコ
- ベネズエラ(国内化が極めて高かった)
これらは「海外に売られたから」崩壊したわけではなく、
自国通貨の信認が失われたから崩壊した。
まとめ:国債保有者の内訳は本質ではなく、
“通貨への信認”こそが最終的な制約である。**以下の誤解が根本:❌ 国内保有だから売られない
❌ 国内保有だから金利は上がらない
❌ 日銀が無限に買える
❌ 通貨への信認は永続するこれらはすべて デフレ時代の幻影 に基づいた議論で、
世界の金融構造が変わった今では通用しないという意見にたどり
つきました。