たのみのエマージング市場もリスクオフに動き始めた?
イギリスのEU離脱の後、エマージング市場は堅調さ維持していましたが
ここにきて怪しくなってきました。
EU離脱という冷酷な現実が突きつけられるまでのここ数週間で、
中国人民元はドルに対し3%近く下落しました。昨年6月以降の大幅な切り下げも
合わせると、名目値で6%安となっています。
通貨安は海外向けの製品価格が下がり輸出が増えるため追い風になる可能性
がありますが、この理論は世界的に需要が存在すれば実効性がある場合です。
ところが過去数年に成長は鈍化し、それに伴い貿易も減少しています。さらに、
通貨安はインフレも加速させるため、中央銀行は成長てこ入れを目指す利下げを
望んでいるにもかかわらず、急激な物価上昇を防ぐための利上げへ向けた圧力を
受けるという、非常に悩ましい状況に陥りつつあります。
だが、最大のリスクは債務残高です。新興国の通貨安とドル高により、実質的な
債務負担が膨らみ金利支払いコストが急増します。前例のない超低金利時代に入った
ことや米連邦準備制度理事会(FRB)の債券買い入れが一因となり、新興国のドル建て
債務は過去10年で3倍に増加しています。
中国の債務残高は突出しているが、他国の債務もかなり積み上がっています。
ソブリン債も圧迫される恐れはあります。
金融危機を受けソブリン債は相次いで格下げされたが、その後の回復が遅く、
信用力は急速に低下しています。
多くのエコノミストが、新興国の混乱は想定ほどはひどくないかもしれないと発言して
いますが、その前提は、中国経済が軌道から外れず、資源価格が持ちこたえ、FRBが政策
の現状を維持する限りのようです。
ただ、この先は市場が極度に不安定化する時期が来る可能性が相対的に高く
これからのエマージング市場に、大きな注意が必要のようです。