香港金融管理局(HKMA)による香港ドルペッグ制とは?香港国家安全維持法による今後の見通しは!
中国が香港国家安全維持法を施行したことで、米国が香港への
優遇措置廃止の動きを始めています。
そこで、注目されるのが、香港ドルペッグ制の維持についてです。
投資家は動揺しているのは、36年間続いてきた香港ドルと米ドルの
ペッグ制の安定を巡る懸念も高まっています。
そこで今回は、香港ドルペッグ制とはそもそもなにか、そして今後
の香港ドルペッグ制の見通しについて調べてみました。
香港ドルペッグ制とは
香港ドルペッグ制は機軸通貨である米ドルと香港ドルが決められた
範囲内だけで変動するよう安定性を保障した装置のことです。
これは、香港が1983年に施行した制度です。 1米ドル当たり
7.75~7.85香港ドルの範囲で固定されるように
コントロールされています。
このペッグ制のメリットは投資家と企業は米ドルを香港で両替損失なく
安定的に運用できることです。
一方中国にとってメリットなのは、香港ドルHKD=D3は米ドルに対する
変動幅を1米ドル=7.75-7.85香港ドルの狭い範囲に設定し
香港金融管理局(HKMA)が香港ドルを売買し、値動きをこの範囲内に収め
HKMAは今年に入ってからこれまでに総額136億8000万米ドル、
(1兆4500億円)相当の香港ドル売りを実施しています。
中国側のメリットととしては、香港を中国の玄関先としての役割を
担っていたのが、国家安全法によって、中国国内からの資金がより香港に集まり
安くなっています。
中国政府が本土で厳しい資本統制を続けているため、香港が果たす役割は、
主要な資金調達の経路から世界最大級の株式市場、中国本土の株式や債券に
流入する国際投資の最大の入り口となっているのです。
香港ドルペッグ制の今後の見通しは
ペッグ制を維持するため、香港の公定金利は米国の政策金利を
上回るように設定されています。それは香港ドルがレンジ内で
変動させるためです。香港の銀行間取引金利は米国の銀行間取引金利よりも
高くなっているため、国安法に関連した資金流出の懸念にもかかわらず、
香港ドルは堅調を維持しているのが今の状態です。
その背景としては、トランプ政権が世界最大級の米ドル取引拠点である
香港のペッグ制を損なえば、米ドルの世界の基軸通貨としての覇権にも
打撃が及ぶとの見方があり、アメリカが香港ドルペッグ制を放棄しない
との見通しが強いためです。一方で米中間の緊張がエスカレートすれば
米国が香港の銀行による米ドルへのアクセスを制限する可能性があるとの
懸念もありますが、それをすれば、米国にとってのダメージを大きくなる
との見方をアメリカ政権内でも強いことが、香港ドルペッグ制が維持される
との見方を支えています。
香港ドルペッグ制の放棄は政権内で支持は広がっていないもようだと報じられて
います。香港の外貨準備も4000億米ドル超と、市場流通分の6倍もあること
から、これを手放したくないとの、意見が米国政権内では強いようです。
まとめ
香港は1997年に中国に返還された以降
金融面での存在意義は増しています。香港ペッグ制が
失われると、香港の金融拠点としての存在意義は低下します。
一方で、中国本土の富裕層も香港に集中しているので、
1兆米ドル超と推定される香港の個人資産の半分以上は、
本土の個人資産ですが、ペッグ制が放棄されれば、こうした
中国本土の資産だけでなく、米国からの資本も大きく傷つく
可能性が高いです。それを懸念してか、トランプ政権も
香港ドルペッグ制については、二の足を踏んでいるようです。