転換社債型新株引受権付社債(CB)の転換価格と株価の関連とメリットデメリットは
転換社債という言葉は現在使われていませんが
起業が資金調達するうえでの重要なツールと
なっています。
平成14年4月の商法改正により 『転換社債型 新株予約権付社債』
という名称になりましたが、以前は 『転換社債』 の名称で
広く認知されていました。あらかじめ利率(クーポン)や
償還期限が決められている他、株式に転換できる価格(転換価格)
が設定されており、期間内(転換請求期間)であれば、
その発行企業の株式に転換する事もできます。
少し前までは、アーリーラウンドにあるスタートアップなどのように、
起業後間もない事業者が使う資金調達方法でした。
現在では、そのような事業者に限られず、追加で資金調達を実施する事業者にも
使われている資金調達方法になっています。
今回はこの転換社債すなわち転換社債型新株引受権付社債
について、そしてメリットデメリットについて調べてみました。
転換社債型新株引受権付社債とは
これは株式に転換できる債券です。Convertible Bondという
英語の頭文字をとって略 称でCBとも呼ばれています。
CBは普通社債と同じように毎年一定の利払いがあり、償還まで
保有していれば額面金額で償還されます。
債券としての性格と株式としての性格の両方の性格を持ち合わせた有価証券です。
わかりやすくするために「新株予約権」と「社債」に分けて、
それぞれについて見ていきます。
新株予約権と社債は、会社法でそれぞれ次のように定義されています。
新株予約権 株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の
交付を受けることができる権利をいいます。
社債はこの法律の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を
債務者とする金銭債権であって、第六百七十六条各号に掲げる
事項についての定めに従い償還されるものをいいます。
新株予約権付社債」は、資金調達方法の一つとされています。
新株予約権付社債とは、つまりは、発行された社債に新株予約権が
付いているということです。
新株予約権付社債は、あくまで社債であるため償還を受けるまで
社債を保有し続けるという使い方もできますし、株価が上昇した
場合には権利行使により株式に転換してキャピタルゲインを
得るという使い方もできます。
転換社債型新株引受権付社債の価格は
転換社債は、株式としての性格を兼ね備えた債券のため、株価が
上がれば転換社債価格も連動して値上がりする傾向にありますが、逆に
値下がりした場合は、債券としての価値が下支えとなり、
CB価格は通常、株価ほど下がらず、株価との連動性が弱まる傾向にあります。
転換社債は債券ですので、一定期間ごとに決められた利息(クーポン)を
受け取る事ができます。
また、満期になれば額面金額で償還されます。
例
転換価格1,000円のCBを額面100万円で購入したとしましょう。
この時の購入価格は額面100円につき100円とします。
つまり元本は100万円という事になります。
100万円÷1,000円=1,000株
その会社の株式1,000株に転換できる権利を保有していることになります。
その時株価が1,000円であればCBを買って株式に転換しても、
直接株式を1,000株購入しても、取得費用は同じく100万円ということになり、
市場でのCBの価格が100円であることが妥当と言えます。
ところが、もし株価が1,200円に上昇したらどうなるでしょうか。
株式を直接購入する為には120万円かかることになります。
一方この時もCBは依然1,000円で株式に転換できるわけですから、
CBの市場での取引価格も理論上は100円から120円に2割上昇しても
おかしくないわけです。
つまり、この時120円でCBを売却すれば、株式に転換しなくても、
株式と同じような値上り益を得ることができます。
このように、株価が転換価格を上回り上昇していくと、
CB自体の市場価格もその分上昇する性質があり、これをCBの株価連動性と言います。
株価が下がれば利回りが下支え(下方硬直性)
株価が値下がりした時はどうなるでしょう。
転換価格1,000円のCBは、株価が1,000円から800円、600円…と
値下がりした場合、理論上は株価と同様に100円から80円、60円…と価値が下落します。
しかしながらCBは最初に説明したように、債券としての価値
(一定の利息があり、償還日には額面で償還される)もそなえていることから、
CB価格が下落した場合、額面100万円で償還される債券を、より
割安で購入できるということにほかなりません。
額面より安く債券を購入できれば、その分は償還差益として投資家に
とっては投資収益となります。つまり利回りが高くなるわけですから、
デフォルトの危険性が高まらなければ、償還価格を極端に下回りにくく、
これを転換社債の下方硬直性といいます。この特性からCBは、
株価下落時でも下値メドをつけることが比較的容易となります。
以上のように、株価と連動した値上りが期待でき、株価下落時にも
債券としての価値が下支えするというCBの値動きの特徴は、
そのまま転換社債の最大の魅力となっています。
CBのメリット・デメリットは
メリット
新株予約権付社債により資金調達をする場合、
そこで発行されるのは株式ではなくあくまで「社債」です。
株式発行による資金調達では、バリュエーションの評定が
必要となりますが、あくまで社債であるため、バリュエーションの
評定が必要なくなります。
ここでいう「バリュエーション」とは、企業の価値を金銭的に
評価したものをいいます。特に、起業後間もないような事業者にとっては、
バリュエーションの算定が難しいことが多いので、こういった新興企業に
とっては恰好の資金調達手段となります。
その点、新株予約権付社債では、バリュエーションの評定を先送りに
することができるため、資金調達時においては最大のメリットといえます。
デメリット
新株予約権付社債は事業者にとっては「借金」です。
そのため、満期になれば元金を返済しなければならないうえ、満期に
なるまでの間は社債権者に利息を支払うことも必要になります。
また、社債と新株予約権のそれぞれに適用される規制を課されることに
なるため、会社法だけでなく金融商品取引法上による規制も
確認しておくことが必要になります。
そこで発行する際の契約のコストも想定する必要があります。
まとめ
転換社債型新株引受権付社債は、投資家にとっては魅力的な
ようにみえますが、逆にこのような手段で資金調達する
企業は↑でのべたのようにスタートアップ企業など
まだ企業のバリュエーションが確立していない企業が多いので
やはりそれなりのクレジットリスクを背負っているといっても
いいと思われす。
その点も考慮しながら、投資家であればじっくり考慮する
必要があると思われます。