英EU離脱の後はスペイン総選挙とイタリア総選挙が注目になる
イギリスがEU離脱が決まったことで、EU内の政治的基盤の脆弱さがより注目されて
きそうです。
英国の国民投票の影に隠れてスペインの政局不安はここしばらくあまり注目されて
こなかったがですが、スペインでは昨年12月の総選挙以来、連立協議が難航して新政権が
樹立されない状態が続いており、わずか半年で再び選挙を実施せざるを得なくなっています。
スペインはこのような政治的膠着状態が続いています。
とはいえ、2度目の選挙でも新しい政府が決まらなければ、投資家は不安を抱き、
財政赤字削減に不可欠とされる税制・労働市場改革を実現できるのか疑問の声を
上げかねかねません。
残念ながら今度の選挙でも政権樹立は難しそうだ。直近の世論調査によると、
4政党が大混戦となった前回選挙と同じような結果に至る可能性が濃厚です。
国民党による少数与党政権か、中道のシウダダノス党と社会労働党の3党による
大連立政権のどちらかが市場の望む新政府の姿ですが、そのためには国民党を率いる
ラホイ首相の退陣が前提条件になります。同首相は今のところ辞任の意向は示して
いません。
あるいは、獲得議席数にもよりすがあ社会労働党と極左のポデモス党による連立政権という
シナリオも考えられます。ただ、ポデモス党がカタルーニャ自治州の独立の是非を問う住民投票
の実施という公約を撤回すること(社会労働党は同投票の実施に反対)とサンチェス社会労働党党首
の首相就任を受け入れることが前提となります。
どちらのシナリオも実現しないことが分かれば、スペインは3度目の総選挙を余儀なくされる
かもしれません。
一方、イタリアで高まるリスクに比べれば、スペインの政治的リスクは大したものでは
ないように見えます。イタリアでは反体制派の新興政党「五つ星運動」が先週末、ローマと
トリノの市長選で圧勝しています。
このような衝撃的な結果になったのは、中道右派の有権者たちがレンツィ首相率いる民主党
の候補ではなく「五つ星運動」所属の候補を支持したからです。
上院の権限を大幅に縮小する憲法改正案に関する国民投票を10月に控え、市長選での敗退は
レンツィ首相にとって不吉な前兆のように思えます。首相は国民投票で憲法改正案が否決されれ
ば政界を引退すると言明しています。
イタリアの銀行システムが不良債権処理に苦戦し、公的債務が依然として非常に高い水準に
とどまる中、市場がレンツィ首相退陣の可能性を大きな悪材料と捉えるのは確実です。そうなれば、
すぐにイタリアの政治的安定性が疑問視される可能性が高いです。現在の議会から支持を得られる
新たな政権が登場する公算は小さいため、旧選挙法の下で新たな選挙を行わなければならないかもし
れず、反体制派政党が過半数を占める議会が生まれる可能性も高まります。
イタリアの10月の国民投票は同国のEU・ユーロ圏からの脱退の是非を問うものではないですが、
万が一のときにイギリスと同様に市場の信頼を失いかねない政権が誕生し波乱を招く要因
になりかねないリスクが高いです。
このように、ユーロの相場は政治的要因に振りまわれそうな展開が今後も続く可能栄が高そう
です。