
米国社債の信用スプレッドが縮小とユーロドルの関連性は?
ECBは、ユーロ圏経済の底上げを狙い、社債の買い入れを始めました。
これまでにその恩恵を大きく受けた分野は多岐にわたり、米国の社債市場にも資金
が流入しています。
欧州での投資収益が先細りする中、一部の投資家は社債をECBに売却し、それで得た
資金を米国に投じています。米国市場の利回りは相対的に高く、中銀の買い入れ策
を巡る期待の変化に影響を受けにくいことがその要因のようです。
ECBの買い入れによって利回りが魅力的でなくなった
欧米では、信用スプレッドが縮小していますが、ECBが社債買い入れ計画を発表した
3月以降は欧州の方が縮小幅は大きくなりました。ただ、この数週間は両者の立場が
逆転しています。8月の社債市場のパフォーマンスはユーロ圏よりも米国の方が好調
でした。これは利回りを求める大口投資家が欧州社債を売却し、米国に資金を移した
時期と重なります。
ECBが6月に社債買い入れを開始して以来、米社債ファンドへの純流入額は欧州社債
ファンドへの純流入額を約20億ドル上回っています。
米国の利上げ観測があっても米国社債市場が好調
FRBの早期利上げ観測が強まる中でも、大手米企業の借り入れコストは
過去最低近くにとどまっています。最近社債市場に参入したBOEやECBの
買い入れに期待してユーロ建て社債と英ポンド建て社債を購入してきましたが、
足元ではこれらの社債を売り、米社債市場への投資を増やしてきているようです。
中銀の介入がない米社債市場は世界中の大部分の投資先に比べて魅力的の
ようにみえています。
ユーロ圏高格付け社債の平均利回りは0.6%と、ECBが社債買い入れを発表した
3月の水準の半分未満へ低下しています。対照的に、米国の同利回りは3.6%から2.8%
への低下にとどまっています。
8月の雇用統計の減速とユーロドルの関係は?
8月の雇用統計の内容は予想に届かず、9月の利上げはとりあへず
見送りの見方が優先しています。
ただ雇用者数の上昇基調は維持されていることから、より信用リスクや
株式市場に資金が入りやすい、いわゆるリスクオンの流れを助長しやすい
環境となりそうです。
現状はユーロドルは膠着状態ですが、この好調な信用市場を背景に
ドルは買われやすい状態が続くと思われます。