
米国株式S&P500は割高な状態なのかそれともまだ上昇余地があるの?
アメリカ6月の雇用統計が予想よりも大幅によかったことを
受けてからの米国の株式市場の上昇が止まりません。
イギリスのEU離脱による負の要素があるにも関わらず、市場は
各国中央銀行の金融緩和に焦点があたり、市場はまさに金融緩和に
よる流動性相場と化しているようにみえます。
株式市場の割高を示す指標とは
S&P500のPERは、過去10年の平均である14倍を上回っていますが
債券利回りは過去最低水準で推移しており、株式には確かに相対的な
割安感があります。PERの逆数である株式益回りは現在約6%です。
株式益回りから10年債利回りの1.38%を引いた差である株式のリスクプレミアムは
4.6ポイントとなり、金融危機と欧州債務危機を除く過去15年間の最高水準に近いです。
最近のさまざまな問題がもたらす不安感にもかかわらず、楽観論が高まっているのはこのため
のようです。
相対的なバリュエーションは概ね妥当でも、それは株式の適正なリスクプレミアムを
市場が見直す可能性がないことを意味していません。
2014年にジャンク債の利回りは5%未満で過去最低に近い水準でした。ハイイールド債と
米国債の利回り差は約3.25ポイントと過去最低水準をなお上回っており、投資家は陶酔
していました。ところがその後、原油価格が急落し、エネルギー企業だけでなく
コモディティー取引とは関係の薄い企業までもがデフォルト(債務不履行)に陥る
可能性が高まったことでハイイールド債は2014年半ばから底値を
付けた2016年2月11日までに17%急落しました。
ジャンク債のケースと同様に、株式のリスクプレミアムは見かけほど大きくないのかもしれない。
2017年の予想利益の伸び率16%は高過ぎるように見えるが、原油価格の上昇、ドル安、製造業の
好調な指標などを考慮にいれています。しかし、英国の国民投票でEU離脱が選択されたことで、
企業利益の急上昇は疑問視される可能性が高いです。
イギリスのEU離脱がじわじわと企業収益にダメージとなる
英国のEU離脱決定で欧州大陸の経済成長率は離脱決定がない場合より2ポイント
低下する可能性があります。
加えて、英国を含む欧州向けが約15%を占める米国企業の売上高は、伸び率が
0.3ポイント縮小する可能性があり結局、益利回りの分子の予想利益が高過ぎれば、
株式は見かけほど割安とは言えないと思われます。