深セン市場と香港市場の株式相互取引で今後中国株式市場はどうなるの?
深セン市場と香港市場の株式相互取引が正式に発表されました。
しかし、すでに割高になっている投資家にとっての問題は、参入するだけ
の資金があるかということです。
長らく待たれていた深セン・香港市場の株式相互取引の承認は、深セン市場への
アクセスが容易になることを意味します。同市場には、中国の再構築による恩恵
を受けると見られる民間の消費財、ヘルスケア、ハイテク銘柄が数多く上場しています。
しかし、深セン市場にはすでに他の投資家が押し寄せています。
PERはすでにハイパー高水準
予想PER(株価収益率)が20倍を超えているのは同市場とニュージーランド市場の2市場のみで、
世界主要市場の中で最も割高となっています。つまり、中国の変革はすでに株価に織り込まれ
ているということです。
上海に上場している国有企業や重工業銘柄については反対のことが言えます。
上海市場は2014年に香港との相互取引が発表された時ほど異常な割安とはなっていないですが
他の新興国市場と同様にPERは13倍に満たず、先進国市場を大幅に下回っています。
上海市場は割安ですが、不良債権を過小評価していると見られる銀行銘柄や投資妙味の
薄い鉱業や国有工業銘柄が大半を占めていています。深セン市場は成長が見込めますが、
今後12カ月の予想PERは25.7倍と高い値がついています。
実績PERの中央値は67倍と脅威の高さになっているともいわれています。
一方上海市場旧態銘柄で低い成長率
深セン市場の非常に高い利益成長予想を鑑みれば、主に上海上場銘柄、古い中国は同程度の
価値になると指摘する考え方もあります。言い換えれば、
割高な銘柄が年間25%近い成長を遂げるとの見方に賛同するのであれば、バリュエーションは
完全に合理的であるという考え方です。
ニュー・チャイナへの投資を支持する根拠の一つは、オールド・チャイナが明らかに
政治的な影響下にあるということです。上海市場は10大銀行が時価総額の5分の1以上を占め、
その中で最も小規模な銘柄でも深センに上場する時価総額最大の企業と同程度の規模を
有しています。中国が不良債権への対応で銀行株主も痛みを伴わせることを決めれば、
上海市場は大打撃を受けることになります。
まとめ
すでに割高になっている深セン市場において、香港市場の株式相互取引
好影響がどれだけ続くかは疑問があります。
深セン市場も、上場銘柄はほとんど国有企業ではないにもかかわらず、将来的な行方
は同じく政治に左右されます。中国政府はインフラから建設、生産、消費に至るまで
経済のリバランス(再均衡)に大きな影響力を持っており、今年のように
オールド・チャイナへの貸出を増やすことで頻繁に変化を遅らせる
傾向があります。中央・地方政府は銀行融資を管理するほか、不必要と判断した
工場や鉱山の閉鎖や新規投資のペースも決定します。
オールド・チャイナからニュー・チャイナへという変化を最も端的に表すのは恐らく為替相場です。
人民元高が進めば、資金は生産者から消費者に、輸出業者から輸入業者に動ます。
人民元の対ドル相場は1年前に下げ始め、直近1カ月はやや反発しているとはいえ、この1年間の下落
ペースは1994年以来の速さです。従って、年初来の上昇率で比較した場合に深センA株指数が
上海A株指数をしのいでいない(いずれも12%安)のは恐らく意外ではないです。
投資家からすれば、中国は消費主導型経済に移行できるということだけでなく、すでに
相場に織り込まれている水準よりも速いペースで移行が進むということも見込めない限り、
この相場水準でニュー・チャイナ銘柄を買うことは正当化できない水準です。重債務を抱え
る古い国有産業の衰退にうまく対処するのは財政的にも政治的にも難しいため、
そうした買いを実現するには投資家の多大な信頼を得ることが必要となりそうです。