日銀のイールドカーブのステイープ化が抱えている矛盾とは?
まずは日銀のマイナス金利政策とは
日銀のマイナス金利政策とは、当時260兆円(9月10日現在では304兆円)
あった日銀当座預金のうち10~30兆円だけにマイナス0.1%の金利を
適用するもので、200兆円以上の残高に対して従来通りプラス0.1%の
金利を支払うという歪(いびつ)なものです。
ところが「たったこれだけのマイナス金利」で、短い年限の国債だけ
でなく40年の超長期国債の利回りまで低下してしまい、超長期の
イールドもマイナスの領域に低下してしまいまいた。
そもそも日銀はマイナス金利を導入する目的として、短期金利を
ゼロ以下にして長期金利も引き下げようとしたのか、
長短金利差を拡大させようとしたのか、明確な説明を行わず市場を
混乱させてしまう結果になっています。
結果的に銀行収益悪化
実際には短期金利よりも長期国債利回りを代表とする
長期金利のほうが大きく低下してしまい、貸出金利が大きく低下
した銀行の収益が悪化する結果となりました。
そこで最近市場を混乱させていることが、
日銀が長期国債(とくに20年以上)の買入量を絞り、応札する銀行も
できるだけ高い応札利回りになるよう「談合」しているかごとく
長期の利回りが高いところで落札されています。
すでに日本の国債市場は日銀と大手銀行・大手証券が支配する
管理相場になっているためこういうことも可能と考えられます。
日銀のマイナス金利は、そもそも300兆円以上ある日銀当座預金の
うち10~30兆円(それも大半がゆうちょ銀行と信託銀行)だけに
適用されるもので、銀行間のTIBOR市場では、1週間が0.013%、
1か月が0.029%、3か月が0.058%とプラスです。
この歪んだ状況が銀行の収益を悪化させ、それをぜするために
イールドカーブのスティープ化という議論が持ち上がってきて
います。
その自信行脚が最近の国債市場の不安定さにつながっているようです。
そして、最近のECBとユーロの国債市場でも利回りが大きく上昇
しています。
ECBの量的緩和とは
ECBは、3月から政策金利の下限金利がマイナス0.4%、基準金利がゼロ、
上限金利が0.25%としています。
上限金利とは域内の銀行がECBに預金したときに適用される
(つまり費用を徴収される)ものです。
9月2日現在で域内の銀行はECBに1兆1492億ユーロ(131兆円)預金
していますが、そのうち法定準備を除いた3788億ユーロ(53兆円)
にマイナス0.4%が適用されています。
また上限金利の0.25%は、域内の銀行がECBから資金を借り入れるとき
に適用される金利ですが、実際には一時的に資金繰りに窮した銀行に
ECBが救済的に貸出すもので、普段は使いません。
そして基準金利とはECBの通常オペレーションで資金を市場に供給
する金利で、現在のECBの政策金利(短期金利)は有担保でゼロと
いうことになります。また銀行の貸出増加額に対して最長4年間
貸し出すTLTRO(貸出し条件付き長期資金供給オペレーション)は、
下限金利のマイナス0.4%まで適用されます。貸出促進のためです。
日銀はFRBの量的緩和をモデルに?
リーマンショック時にアメリカが実行した量的緩和は
住宅ローン債権の購入が主な目的でした。
アメリカのGDP16兆ドルのうち13兆ドルがその当時
住宅ローンが占めていて約7兆ドルがMBSの形態で
世界中にばらまかれていました。
その救済を図ったのが、アメリカが実行したQEで、その目的は
この市場を回復させることが主な目的でした。
一方で日銀には、具体的な量的緩和の道筋も目的も不明瞭のまま
続けているがうえに、その場その場でおきる矛盾点に市場は
振り回されているようです。