
不動産ファンドのGK-TK契約で匿名組合員への分配が損失場合の会計計上とNAV評価は!
不動産ファンドや太陽光ファンドにおいて、TK-GKの
しくみは一般的になっています。
ところが、匿名組合員への分配金がマイナスとなっている
場合の会計上の計上について、複雑なところがあり
今回はこれについて調べてみました。
目次
匿名組合員への「分配金がマイナス」の場合
匿名組合員に配当する利益がない
さらに、過去の分配済み利益を取り戻す(戻入れ)わけではない
一般的には、「分配すべき利益がゼロ」または「損失分担が発生している」状況です。
TK契約の内容によっては:
匿名組合員は損失分担義務なし(元本は毀損しない)
匿名組合員が損失分担する(元本の減少リスクがある)
の両方があり得ます。
以下は、損失分担が発生する場合(例えば、TK出資者の元本が毀損する場合)を想定して
解説します。
TKの決算書
TK決算書は、匿名組合員(投資家)への**「投資会計(受託者計算)」**を示します。
貸借対照表(BS)
資産:
GKに対するTK出資金(元本)
累積分配益(プラスまたはマイナス)
純資産:
出資金の簿価(マイナス損失分配がある場合は、元本から損失分担額が控除された額)
負債:
通常は「匿名組合出資預り金」などは計上しない(TKは匿名組合員の視点なので、
純資産の範囲内で損益調整)
損益計算書(PL)
分配対象損益:
匿名組合契約に基づき、マイナスの損益が匿名組合員の持分に応じて配分される
例)売上収益 – 経費 = 損失 → 匿名組合員持分に応じて配分
GKの決算書
GKは、法人としての決算書(会計基準に基づく法人税申告用決算)です。
貸借対照表(BS)
負債の部:
匿名組合出資預り金(匿名組合員から預かった資金)
損益分配義務として「未払分配金」などがある場合、それが負債に計上される。
ただし、マイナスの損益分配義務(逆に匿名組合員が負担する損失)については、
負債ではなく「匿名組合出資預り金」が減少(元本が毀損)する形で処理されるのが通常。
損益計算書(PL)
通常の営業収益・営業費用・営業利益が計上される。
匿名組合への分配損益は、GKでは費用でも収益でもない。
(匿名組合出資預り金は負債として処理されており、損益への影響はない)
ポイント:マイナスの分配が起きる場合のBSイメージ
TK決算書 GK決算書
出資金 期首 1億円 固定負債:1億円
期中損失 ▲2,000万円 ▲2,000万円の赤字計上
期末残高 8,000万円 固定負債:8,000万円
TK側:出資金簿価が減少(8,000万円になる)
GK側:「匿名組合出資預り金(負債)」が減少(8,000万円になる)
つまり、損失分配が起きる場合は、「匿名組合出資預り金」
の減額(負債減少)で調整されるのが実務的です。
分配金として「マイナス額を請求する」処理は通常行わない(TK契約により
元本毀損に応じた調整で終わる)。
GK-TKファンドのNAV評価
TK-GKスキームのファンドにおける**NAV(純資産価値)**は:
TK出資者視点の「出資金簿価(期末残高)」
= 元本 ± 分配された損益(累積)
GKのバランスシートでの「匿名組合出資預り金」の残高に一致するのが基本です。
つまり、
ファンドNAV = GKの匿名組合出資預り金(期末残高)
で評価するのが実務的な基準です。
まとめ
TK決算書
BS:損失分担により出資簿価が減少
PL:匿名組合員への損失分配額を計上
GK決算書
BS:「匿名組合出資預り金」の減少で損失分担を調整
PL:匿名組合分配金自体は費用計上されない
ファンドNAV
GKの匿名組合出資預り金の残高をベースに評価
もしTK契約で損失分担義務がない場合(元本毀損なし)なら、分配金が
マイナスになることはありません。その場合、TK決算書では「分配金ゼロ」となるだけです。
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TK組合員に元本の毀損がないのは不動産ファンドの場合
TK出資者に元本毀損がないのは一般的か?
不動産ファンドにおける実務
不動産ファンド(TK-GKスキーム含む)では、TK契約の
内容はファンドごとに異なります。
ただし、日本で一般的な不動産ファンドのTK契約では:
TK出資者に元本毀損リスクを負わせないケースが多い
出資者保護の観点から「損失分担はしない(元本毀損しない)」
と規定することが多いです。
つまり、TK出資者はあくまで配当を受けるだけで、損失分担には参加しない立場です。
一方で、元本毀損が起こり得るTK契約も存在
たとえば、開発型ファンドやリスク志向のプロ投資家向けファンドでは、
損失分担義務が課される場合もあります。
元本毀損がない場合、その損失は誰が負担する?
TK出資者に損失分担義務がない場合、損失は営業者(GK)側が
全額負担することになります。
つまり:
営業者(GK)が損失を抱え込む
匿名組合員への出資金返還義務は元本毀損なしで残る。
つまり「匿名組合出資預り金」は簿価通り返還しないといけない。
事業で赤字が出ても、GKが自社の他の資産やキャッシュで
返還する必要がある(=営業者リスク)。
「GKの代表者が負担する」か?
GK(合同会社)自体が損失を負担する
GK代表者(業務執行社員)が個人で直接負担するわけではない
合同会社は有限責任制(出資者は出資額の範囲で責任を負う)
代表社員が個人的に保証している場合を除き、代表者個人の責任にはなりません。
TK組合員の元本毀損がない場合、損失が出ている場合のTK、GKの決算書は?
出資預り金残高と実際にTK組合員に対する債務義務は違ってくる?
元本毀損がないTK契約のポイント
TK組合員に元本毀損がない場合は、
TK出資金は 元本返還義務が常に維持される
匿名組合員への「返済債務」は、実際の事業損益に関係なく 全額残る
損失が出ても、TK出資者から見れば「出資元本は毀損しない」ため、
TK決算書でも元本部分は維持される
TK・GKの決算書の関係
GKの決算書
GKは法人として赤字(損失)が出た場合、その赤字を負担する義務を負う。
しかし、TK出資金は「匿名組合出資預り金」として全額返済債務として残る(負債として計上)。
つまり、損失が出ても、GKのBS上は「匿名組合出資預り金」負債は 減らない。
営業損失は、GKの自己資本(純資産)がマイナスになる形で吸収される。
GKのBS:
資産 5,000万円
匿名組合出資預り金(負債) 1億円
純資産(自己資本) ▲5,000万円
損失が出ても 匿名組合出資預り金の額は変わらない。
TKの決算書:
TK決算書は匿名組合員への「投資損益報告」だけを示す。
元本毀損なしなら、出資簿価(残高)は 常に1億円のまま。
損益分配欄は赤字でも、出資簿価は毀損しない。
実際の返済義務と帳簿上の「匿名組合出資預り金」の違い
実際の返済義務
**TK出資金(全額)**は、匿名組合員への法的な返済債務として残る
損失があっても、匿名組合員は「1億円の出資元本を返して!」と請求できる
帳簿上の「出資預り金残高」
元本毀損なしなら、損失が出ても減らない(1億円のまま)
GKの損益は別問題として、出資預り金の返済義務は維持される
TK決算書において、分配報告書では、元本保証であっても報告的に
マイナスの分配報告がなされることがある。
TK決算書に「マイナス分配金報告」がある場合の意味:
TK決算書(TK出資者向けの損益報告書)では、
営業者(GK)からの損益分配報告として「マイナス分配額」が
記載されることがあります。
これは:
あくまで 会計上の損益分配の結果 を示している
つまり、「この期間の収益配分はマイナスになりました(赤字が生じました)」という報告
これは 匿名組合契約書における「損失分配義務があるかどうか」 とは別のものです。
元本毀損リスクがあるかどうかは契約内容次第
「マイナスの分配金報告」があっても、それがすぐに元本毀損に
つながるわけではありません。
以下の2パターンがあります。
(1) 元本毀損リスクがない契約
多くの不動産ファンドや私募ファンドで一般的
「営業損失が出ても、匿名組合員の元本は守られる」
TK決算書で損失分配(赤字)が報告されるが、出資金(元本)は減らない
→ TK出資預り金は帳簿上はそのまま維持される
この場合、マイナス分配報告は「配当がない・損失が出た」と
知らせる報告書にすぎません。
匿名組合員は、あくまで「元本毀損しない」という契約に守られているのです。
(2) 元本毀損リスクがある契約
一部の開発型ファンド・リスク商品・プロ投資家向けのファンドなど
契約上「匿名組合員は損失を分担する」と明記されている
営業損失が出たら匿名組合員の元本も毀損する(損失補填する)
この場合、マイナス分配報告は、元本に対する直接的な減価報告にもなります。
帳簿上も、匿名組合出資預り金(元本相当)が減少します。
まとめ
TK出資者に元本毀損義務がない場合、
GKのBS上の「匿名組合出資預り金残高」は常に全額残る
TK決算書の出資簿価も維持される
ただし、損失が出てGKの資産が減少すると、GKの自己資本がマイナスになるだけ
匿名組合員に対する返済債務(匿名組合出資預り金の残高)とは別物です。
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