ラリー・クドロー氏は中国との知的財産権パテントトロール問題を解決できるのか?
G20が終わって、世の中楽観的ムードが流れています。
株式市場は上昇し、為替では、ドル円がドル高円安に
動いています。
そして交渉にあたったラリークドロー氏は貿易協議に
関する記者説明会で、両国は「知財権侵害と米企業へ
の技術移転の強要に関して合意にかなり近づいている
と発言しています。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
巧妙化の一途をたどっている中国の知的財産侵害
中国による知的財産侵害の手口が巧妙化の一途をたどって
います。中国進出とひきかえに海外企業に技術を開示させる
例が相次いで報告されているほか、模倣品の製造や流通も
多様化しています。他国の知財を効率よく奪う手法を
「進化」させています。一方で、中国企業による特許の
出願件数が増えたことで、海外企業が中国内で知財訴訟に
巻き込まれるケースも目立ち始めているようです。
中国では、海外企業が自動車や船舶、送電網の建設と
いった一部の製造業などを国内で営む場合、中国側の
出資が過半を占める合弁会社を設立しなければならない
と定めた法令があります。
外国企業は、中国での現地生産を本格化するために
中国政府に合弁会社設立を申請します。その後、中国
の相手企業が具体的な交渉を進める段階になって、
会社が持つ製造などの全ての技術を開示するように
求めてきます。
パテントトロールも問題になっている
米国の制裁理由に挙げられているように、例えば、
外国企業が中国に進出する際、中国企業との合弁が求められ、
中国政府によって中国企業への技術移転が強要されます。
また、中国企業が外国企業から技術のライセンスを受けた場合、
その改良技術は中国企業のものとなってしまいます。
そこでプロパテントの問題も生じてくるのです。
つまり、外国企業の技術をマイナーチェンジしただけで
中国企業の技術だと主張されてしまうのです。
こうして、逆に知的財産権侵害で訴えられるケースも
最近では少なくないのです。
このように外国企業が不利な条件を飲まされる法制度になっている
ようです。
中国製造2025への戦略
中国の製造強国を目指す国家戦略である「中国製造2025」のための
手段の一つとなって知的財産権を利用しています。
海外からの批判は高まっているなか、中国政府は「知財保護の強化」
を打ち出して批判をかわそうとしているのです。
中国国家知識産権局によると、2016年に受理した特許出願件数
は133.9万件、対前年比21.5%増で6年連続世界一となっています。
そしてそのほとんどが中国居住者による国内出願です。
ちなみに、世界の特許出願件数1位がZTE、2位がファーウェイで、
注目されている中国巨大IT企業です。
この異常なほどの急増の原因は、中国企業への特許出願を
政府が大いに奨励しているからです。これで問題なのは、
中国人・中国企業による特許出願には補助金が出されて
いるところです。企業の出願料の負担を考えると、こうした
内外の差別的扱いは許されるものではありません。
特許として認められるためには「新規性」の要件が必要なのは
当然ですが、その点の審査が中国・中国企業が出願した案件に
ついては甘いとの声もあります。外国人・外国企業との間で
ダブル・スタンダードになっているのではないかとの
指摘も企業の間では広まっています。その結果、中国に
進出している日本企業は公知の事実だと思っていたら、
ある日突然、中国企業から特許侵害として訴えられる
という事態も起きています。
提携中国企業が訴えられてもリスク
中国企業にライセンス供与して、その中国企業が
他の中国企業から特許侵害で訴えられた場合、技術を
供与した外国企業がその補償責任を引き受ける義務を負うという、
外国企業だけに不利なとんでもない制度があります。
これは明らかにWTO違反になっています。
このように、中国企業が知財の保有量を増やしていることで、
競合の中国企業から特許侵害で訴えられるリスクが急激に
高まっています。
長い期間、資金と時間をつぎこんだ技術を一瞬で奪い取って
しまいます。
標的となっている企業は日本だけでなく、米政府も、中国への
進出と引き換えに技術ノウハウの提供を米企業に強制している
とされる状況を調査してきました。トランプ政権が、中国に
よる知的財産権侵害として問題視しています。
さらに、中国をめぐる知財問題で懸念されているのが、買い取った
特許権を利用して他社に訴訟を仕掛ける特許管理会社
パテント・トロールの出現です。背景には、上記のような
中国の特許出願件数の増加があります。
まとめ
このように中国の特許権侵害問題は、一筋縄ではいかない
根深いものがあります。
もっと土壌を探ってみると、中国からの留学生から始まります。
中国から留学生は中国当局が管理することができ
一般企業で得た知的財産を最終的には、中国企業に
持ち帰り、最終的に国のプロジェクトにはめ込まれていきます。
このように、中国問題を解決するには、構造的な問題が
絡み、クドロー氏が楽観視しているような要容易なことでは
ないようです。
ハト派的なクドロー氏であれば、すぐに中国にうまく立ち回れて
しまう可能性が強い今回の米中の貿易紛争一時停止案だと
思います。