ライトハイザーUSTR代表とピーターナバロの出現によって中国との貿易戦争は避けられない?
米中の貿易紛争がヒートーアップしています。
今年2月下旬、中国の習近平国家主席の経済ブレーン筆頭
の劉鶴氏がワシントンを訪問した際、トランプ米大統領が
凍結していた両国の通商協議再開のお膳立てを
劉氏がすると期待されていましたが、その期待を覆す人物
が現れました。
その人物がピーター・ナバロ氏です。
コーンNEC委員長更迭とナバロ氏の関係
当時のコーン国家経済会議(NEC)委員長と会談が
予定されていたタイミングで、トランプ政権は主に中国を
標的にした鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置を発表しました。
こうした動きはまさに、コーン氏が更迭された同時に、中国に
対して強硬派のピーターナバロ氏の意見が重要視されるようになった
時です。
米国側で強硬路線を主導しているのは、ピーターナバロ通商製造
政策局長とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表のこの
2人です。
ピーターナバロ氏が、長年不公正とみなしてきた中国の
貿易慣行についてより対決姿勢をあらわにしていく
トランプ政権の方向性が決まった時なのです。
その後米政府が対中制裁の追加関税品目500億ドル相当
を公表すると中国側がただちに報復措置を打ち出し、
それに応じてトランプ氏が追加関税対象を1000億ドル
まで拡大する意向を示すなど、対立はエスカレートして
いっています。
ナバロ氏は、コーン氏がNEC委員長を辞任した後に
通商政策の表舞台に登場してきました。関係筋によると、
コーン氏は中国の不公正な貿易慣行をやめさせるべきだ
という考えはナバロ氏と共有していたものの、欧州や日本の
協力を得て中国に圧力を加えるべきだと提唱していました。
しかしコーン氏がトランプ氏をその線で説得できずに政権を去ると、
対中貿易問題ではナバロ氏の意見が圧倒的な影響力を占めるように
なったのです。
ライトハイザーUSTR代表の貿易政策は
ナバロ氏やライトハイザー氏の声を
トランプ氏が吸い上げています。
これによってトランプ氏がより理性的な場所へ戻る望みは
薄いと関係者は打ち明けています。
トランプ氏自身もかねてから中国の貿易慣行を批判し、大統領選
でも何度も話題にしてきただけに、コーン氏の辞任後は選挙の
公約を掲げ続けられる余地が高まったと感じています。
中国との貿易戦争は避けられない?
一方中国商務省の報道官も、米政府が打ち出した制裁措置を
批判し、強力な対抗策を講じると示唆しています。現在の環境では
両国の交渉が行われる可能性は少ないようです
ナバロ氏とともにライトハイザー氏も、中国との対決色を強める
ことを推進しているので、現トランプ政権では、トランプの暴走
を止める人間がいないどころか、米中貿易戦争にむけてアクセル
をふかす人間しかいないのが現状です。
その中心人物がナバロ氏とライトハイザー氏ですが
ライトハイザー氏の姿勢も筋金入りで、2010年の
議会証言では、中国の貿易慣行を「強制的に変えさせる」
には世界貿易機関(WTO)の一部ルールを無視する
必要があるかもしれないとまで主張しています。
ライトハイザー氏はカナダ、メキシコとの北米自由貿易協定
(NAFTA)再交渉にも同じような強い態度で臨み、
両国の反発を招いて協議がなかなか進んでいないのが
現状です。
こうなると、貿易戦争に突入することを前提にして
為替市場にも向き合う必要が出てきたように思います。
まとめ〜ドル円市場への影響は
現在のマーケットは、米中貿易問題に右往左往しながら
動いていますが、米中はどこかで妥協するのではないか
という期待もありながら動いているように感じます。
ただ現実問題として、コーン氏が去った後、トランプに
歯止めをかけるどころか、火に油を注ぐ人物が周りを
固めているだけに、とことん行くところまで行く可能性
もあります。
その場合には、ドル円への影響も避けられず、ドル安円高
リスクに備えておいたよさそうです。