
ポンドドル相場が反応する英の「国内市場法案」とは?今後の「合意なきブレグジット」の見通しは?
ジョンソン首相が9日、EUと結んでいた離脱協定の一部を
骨抜きにする「国内市場法案」を下院に提出しました。
これをうけて、EUが猛反発し、自由貿易協定(FTA)を柱とする
将来関係を巡る協議に暗雲が立ちこめる結果となっています。
この動きをうけて、ポンドドルの動きも雲行きが怪しく
なっています。そこで今回はこの「国内市場法案」について、
そして今後のポンドの予想について調べてみました。
「国内市場法案」とはなに?

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国内市場法案は英国内法の中に、北アイルランドの物品の
英市場への自由なアクセスを確実にし、EU国家補助金の
規則が英領北アイルランドには引き続き適用されることを
示唆しています。そして他の英国地域には適用されないことを
明確にすることをこの法案は意味しています。
これは、1月にEUと合意した内容と異なるものであり
EUの懸念を引き起こしています。英国とEUが1月に調印した
離脱協定の一部条項を、英国が一方的に変更することを決めたことに
なります。
国内市場法案の狙いは、離脱協定に含まれる「あいまいさを取り除き、
北アイルランド市民への約束を英政府が常に果たせることを確実にする」、
と英政府は主張しています。
「合意なきブレグジット」への可能性は
この法案を下院に提出したことを伴って「合意なきブレグジット」の
リスクは高まっています。なぜならば、英国とEUは10日、緊急会合を
開催し、EUは、英政府が協定を順守するという保証が得られない場合、
英国に対して法的措置を講じる構えをみせています。
EUは国内市場法案の修正を要望しており、それが実現しなければ、
移行期間が終わる年末に、何の取り決めもないまま、英国のEU離脱が
現実化します。
ポンドドルの反応は
この法案の提出を受けて、ポンドドルは揺らいでいます。
ポンドドルは10日の相場では、ここ数か月でもっとも大きな下落幅を記録
しています。今年の7月以来の安値をつけています。
ポンドドル相場は、「合意なきブレグジット」にむけて
加速している、英国とEUの動きを警戒しているようです。
今後の「国内市場法案」と「合意なきブレグジット」の見通し
国内市場法案が成立するためには英議会の
上下両院による可決が必要となります。9月14日に下院で
基本的問題について、その後4日間に詳細を巡る審議が行われます。
各議員が修正案を提示します。一方で上院は保守党が過半数を
握っていないため、可決にむけては厳しい状況が伝えられて
います。そして国内市場法案の問題を受けて、数週間ほどのうちに、
EU欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長とゴーブ英内閣府担当相が
主宰する合同委員会が行われるかどうかが市場の注目となっています。
交渉は9月28日-10月2日に開催される予定です。EUは、交渉決裂の
際に責任を追及されるのを絶対に避けようとしており、離脱協定で
もめている中でも、決して交渉のテーブルから立ち去らないと強調しています。
10月15日にEU首脳会議が開催される予定ですが、ジョンソン首相は
この10月15日までにEUとの将来の関係について交渉をまとめたい
と表明していますが、それまでにまとまらなければ、
「合意なきブレグジット」がいよいよ現実化する結果となりそうです。
EUはこれまで、英国との将来関係交渉は10月末まで、あるいは
最悪でも11月の最初の数日間までをタイムリミットと
しています。
来年1月1日に英国のEU完全離脱までの移行期間が終了します。
新たなFTAが成立していなければ、従来の緊密な貿易はなくなります。
すなわち、世界貿易機関(WTO)の定める貿易規定に基づく関係に
戻ることになるのです。来年1月1日以降、英EU間の貿易には関税と
数量割り当てが導入され、とくに英国にとっては大きなダメージなる
ことが予想されています。
まとめ
英政府が下院に提出した「国内市場法案」は、EUと合意した離脱案
を無視した勝手な国内法のようですが、まずは、英国内(上院)でも
成立するかどうかが注目されます。上院では、野党が過半数をもっている
ので、前回の選挙でジョンソン首相が圧勝した流れが、今回の法案で
どう英国内で影響してくるかが注目されます。この法案をEUにぶつければ
事実上の「合意なきブレグジット」来年1月から現実化してしまう可能性
が高くなります。当面のポンドドルは、再びこの政治状況も左右されながら
不安定となることが予想されます。