ペドロ・サンチェス首相への新政権でユーロが売られない理由は
先週、イタリアとスペインで新政権が誕生しましたが
この2国の市場の反応が大きく異なっています。
イタリアの政権交代が市場を大きく動揺させたのに対し、
スペインの政権交代の時は安定していました。
そこで、今回はスペインの政権交代がイタリアと違って
なぜ安定しているのか調べてみました。
スペインとイタリアの違いは
その背景には両国の経済が異なる道を歩んできたということ
があります。両国のユーロに対する考え方の違いがあります。
ポピュリスト政党2党から成るイタリアの新政権はユーロ圏離脱
の可能性もちらつかせているのに対し、スペインの主要政党は
すべてユーロ圏残留を約束しています。
欧州債務危機の最中、スペインはイタリアよりもずっと厳しい
経済状態でしたが、しかし、より思い切った経済改革を
行ったのはスペインの方で、景気回復もかなり力強いものに
なりました。その国内総生産(GDP)は今や危機前のピーク水準
を超えています。それに対してユーロ導入以前に遡る経済問題の
解決を怠ってきたイタリアのGDPは過去のピーク水準を5%
下回っており、有権者は過激な経済政策を期待するように
なっています。
スペインの改革とは
保守派のラホイ首相の下、スペインは従業員の解雇
や職場環境の変更をより容易に安くできるように
するといった労働市場の自由化で欧州債務危機に対応した。
銀行には不良債権の処理、統合、資本構成の変更などを迫り、
財政赤字を抑制するために公共支出を削減しました。
そうしたこともあり、9%も減少したスペインのGDPは2013年に
回復し始めています。
失業率は、依然として高いままですが、スペインの政界で
ユーロ懐疑論が定着してこなかったのには景気回復の影響が
大きいようです。後任のペドロ・サンチェス首相はラホイ氏の
予算を維持すると約束しています。
一方でイタリアに不安が募っている理由は
イタリアはは生産性の伸び悩み、低出生率、硬直的な
労働市場など、ユーロ導入以前の構造的問題を抱え込んだ
まま欧州債務危機に突入しています。イタリアの銀行の
不良債権処理はなかなか進みませんでした。労働市場改革も
進んでいません。イタリアの最も重要な財政改革は
年金給付額を減らし、退職年齢を引き上げることで
年金の負担を削減することでした。しかし、これが火をつけ
変更は非常に不人気で、ポピュリストの新政権はそうした
措置を撤回すると約束しています。
まとめ
同じ時にイタリアとスペインの政権交代がありながら
反応全く違う理由には、スペインのサンチェス政権
対する市場の信頼があるようです。
言うなれば、スペインは構造改革を進めてきたうえでの
汚職に絡んだスキャンダルで政権交代となりましたが
ユーロに留まるスタンスは前政権と同じようです。
ユーロは今後まだイタリアに振り回されそうですが、
とりあえずは、再選挙が避けられ、ポピュリスト
政権とはいえ、急激なポピュリストの議席の
急伸は避けられたので、ユーロはしばらくは落ち着く
と思います。