ベルファスト(グッドフライデー)合意と今後のブレグジット協定とポンド円の見通しは!?
英国が国内で採用しようとしている「国内市場法案」と
ブレグジット条件を主張するEUとの間で、対立が
おきています。
EUは1日、英国がEU離脱協定を一部無効にすることを可能にする
「国内市場法案」を巡り法的措置を開始しているのです。
EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、
同法案を巡りEUが離脱協定の条項にのっとり英国に正式通知の
書簡を送ったと表明しています。そこで、9月末までに
国内市場法案の問題部分を撤回するよう求めてきましたが、
英国はこれを無視したかたちで期限がきてしまいました。
この問題の根源となっているのは、北アイルランド問題です。
そして、そこにあるのは、ベルファスト条約というものです。
そこで今回は、ベルファスト条約と今後のブレグジットの
行方について調べてみたいと思います。
ベルファスト合意とはなに?
これは、イギリス政府とアイルランド共和国政府の間で結ばれた
北アイルランドの和平合意です。1998年4月10日に北アイルランドの
ベルファストで合意されました。合意日が聖金曜日(グッド・フライデー)
であったため、グッドフライデー合意とよばれることもあります。
この合意により、アイルランド共和国は国民投票により北アイルランドの
領有権を放棄し、イギリスは1920年のアイルランド統治法を廃止しました。
この合意によって、1960年代以降、約30年にわたってプロテスタント系と
カトリック系の住民が繰り返してきた武力紛争に和平をもたらす
ことができました。この合意は、ノーベル平和賞にもつながったことでも
有名です。ベルファスト合意は、(1)イギリス政府とアイルランド共和国政府は
北アイルランドの領有権を主張しない、(2)北アイルランド住民の過半数の合意なしに、
北アイルランドの地位変更は行わない、(3)将来において、北アイルランドの帰属は
北アイルランド住民の意志に委ねられる、(4)それまで北アイルランドは自治政府の下
に置く、などについて合意しています。
北アイルランドでは住民の71%、アイルランド共和国では94%が
合意内容に賛成投票し、北アイルランド自治政府が設置されました。
英国の「国内市場法案」がEU離脱協定に反する理由は
英政府は、国内市場法案でアイルランド国境問題など離脱協定の
条項を変更する「根拠を明確に示した」と表明し主張したことが
EU側からすれば、EU離脱協定を無視した内容であると反発して
いるのです。英国サイドは、英国内市場の整合性を守るための
法的セーフティネットの構築が必要だと主張していますが、
EU側は、英国が離脱協定を骨抜きにしようとする限り、通商分野などで
合意できないと強調しています。バルニエ首席交渉官は
EUと英国の長い交渉の結果を英国が無視しようとしているとして、
合意なきブレグジットが現実のものとなろうとしています。こうなると
英国はEUとの貿易関税について、恩恵をうけれなくなる可能性が
高いことになります。また、バルニエ首席交渉官は、合意なきEU離脱が
北アイルランド紛争を終結させるため結ばれたベルファスト合意(グッドフライデー合意)
を守る唯一の方法だと強硬な姿勢をとっています。
今後のEU離脱協定の見通しは
英国は、このEUからの書簡に1カ月以内に返答する必要があります。
欧州委は、英国からの返答を検討し、満足できる内容なら英国に
協定の順守を要求し、満足できなければ欧州司法裁判所に提訴する
見通しです。英側に多額の罰金が科せられる可能性もありますが
これも長い年月がかかることが予想されます。
EUと英国は通商分野など将来の関係を巡る公式協議を
9月28日から行っていますが、このままだと、合意なきブレグジット
が現実のものとなりそうです。
ポンド円の見通しは
新型コロナのパンデミック後のポンド円相場は
徐々にポンドがきりあがっていく展開が続いて
いましたが、9月くらいからこの上昇トレンドも
下抜けしたフォーメーションとなっています。
(チャート:楽天証券)
↑のチャートは、ブレグジットからの約5年にわたるチャートですが
今後の焦点としては、国民投票でブレグジットが決まった以降の底値である
120円台前半がキープされるかどうかです。
ポンド円の長期のトレンドは、長きにわたり下降トレンドで、ここ5年間
は調整的なボックスのの動きに終始していたと言えます。
しかしながら、このボックスの動きに終止符が打たれるとするならば
やはり、ポンド円の下値ブレイクのリスクが高いと思われます。
まとめ
EU離脱協定と北アイルランドの問題は英国とEUとの
間でどうしても解決できないポイントとなっています。
英国は「国内市場法案」を国内で通過させることによって
実質、EUとの間で合意したEU離脱協定を骨抜きにしよう
としていますが、これにEUが反発、すでに解答期間が
9月末で過ぎているだけに、今後合意なきブレグジットが
現実のものとなりそうです。そうなると、ポンドの動きは
やはり、長期のトレンドどおり、下値に抜けていく可能性が
高いと思われます。