ブルーウェーブ(民主党)勝利でも米株式市場のコールオプションの買いが続くのか?
2020年の市場、とくに米国の株式市場は多くの注目すべき
事象が起きましたが、コールオプションの需要はもっとも
注目すべき材料となりました。このオプションの需要の主役
となっているのは、基本的にはリテール取引とバイサイド取引である
「顧客」の動きでした。
コールオプションのスポットガンマの動きは
ご覧のように、単一銘柄のコールオプションに費やされている
プレミアムは、ETFやインデックスのそれを大きく上回っています。
20年2月にはコールの買いが加速し、当時は記録的なコールの取引量と
なっていました。しかし、3月の市場崩壊後、単一銘柄のコール需要は、
ETFや指数を比較しても上昇していました。
この現象について重要なことは、これらのコールの買いが市場を
上昇させる可能性が高いということです。これは、コールの購入者が
オプションを購入すると、ディーラーやマーケットメーカーがコールを
空売りしてしまうからです。そのポジションをヘッジするためには、
最初に株式を購入し、市場が上昇するにつれて株式を購入しなければ
ならない構図となります。これは、株式が上昇するにつれて、ディーラーや
マーケットメーカーは株式を買い続けなければならないことを意味します。
市場が上昇すると、オプションの投機家にとってはコールの買い増しが
魅力的になり、それはすなわち、ロングヘッジが増えることになります。
これらのコールオプションのフローは市場に大きな影響を与える可能性があり、
トレーダーは現在、これらのヘッジのために買いあがっている構図です。
コールオプションの主な購入者は?
3月の安値から市場が大反発したことを考えると、ETF/インデックス・コールの
取引量がないのは奇妙なことです。一般的にインデックス・オプションは、
想定元本が高いため、大規模な機関投資家などが参入します。しかし、3月に
大幅下落した際には、リテールと大規模機関(ソフトバンクなど)の両方が、
この単一株コールプレミアムの急増に基づいて単一株を優先して、コールオプション
を買ったようです。
ブルーウェーブの勝利はオプション市場で織り込み済み?
大統領選後もこのコール買いの傾向が大きく変わると考える理由は
ほとんどないと考えている向きが多いようです。選挙まであと数週間
となったことで、いくつかのブローカーが証拠金率を引き上げ、11/3への
買いを抑止する可能性があることに注意が必要です。ブルーウェーブ(民主党)
が優位であることは、一般的なコンセンサスのようであり、同時に大規模な
景気刺激策を市場は見込んでいます。パブロフ的な刺激反応を考えると、
コールの購入者は力強くステップアップし、市場を新高値に押し上げる
かもしれません。
大統領選のリスク要因は
このように、大統領選挙での民主党の勝利と大規模経済対策は、
ほぼ織り込んでいるようですが、逆に、何らかの選挙問題が発生した場合、
市場が大きく反応する可能性があります。それは、イベントのリスクヘッジ
として、2020年12月にはかなりのプットポジションが出ており、
市場が弱くなるとオプションディーラーがこれらのプットポジションを
ヘッジするために先物をショートするようになるのではないかと
の思惑もひろがっています。これは、2018年12月と同様の大規模な
急激なドローダウンにつながる可能性があります。
まとめ
コールオプションの買によって、米国のハイテク株の上昇基調は
続いています。これがバイデン氏の勝利によっても止むことは
考えにくというのが市場のコンセンサスですが、逆に、このバイデン勝利
のシナリオ意外のイベントが起きた場合、例えば、選挙自体が混乱の
窮地に陥ったりするなどのケースは、予想外の市場の急落を導く
可能性も否定できません。現在はファンダメンタルズを度外視した
なかでの、フローによる投機のコールの買が市場を占有している
ことが逆に、予想外の急落を招くリスクも考慮すべきだと思います。