ブラックロックがESG投資で厳しい立場に置かれている理由は!
資産運用会社のESG投資について、いろいろ物議が
わきあがっています。
ブラックロックといえば、世界最大の投資運用会社ですが
ある意味言葉のムーブとなっているESG投資について
その曖昧さと目的の不明確さについて、米国の議会に
おいても物議を醸すようになっています。
そこで今回は、ブラックロックの壁際にたたさされている
ESG投資について調べてみました。
この資産運用会社の方針は、全米の検事総長や州財務長官の標的になって
います。
ブラックロックのESG投資基準について物議
世界最大の資産運用会社であるブラックロック社は、
その環境・社会・ガバナンス(ESG)投資基準により、民主党と共和党
の議論の的となっています。
民主党系はブラックロックのESG投資を長い間支持してきたが、
保守派の州はますます反対の声が高まっています。
8月には、19の共和党系の司法長官がブラックロックCEOの
ラリー・フィンク氏に、ブラックロックのESG投資は受託者責任に関する法律に
違反するとの書簡を送付しています。
これらの州知事によれば、投資家の利益は受託者が最優先するべき事項であるが、
ブラックロックは「ネットゼロ」の炭素排出計画を推進するためにその
利益を犠牲にしているという主張です。
ブラックロックは、ネット・ゼロに熱心で
同社のウェブサイト「Path to Net Zero」では、「ネット・ゼロの世界への移行は、
すべての市民、企業、政府が共有する責任である」と述べ、その移行に対する
ブラックロックの取り組みを詳しく説明しています。
しかし、その取り組みは、本当にブラックロックの顧客の最大限努力する
財務的利益につながるのだろうか?
バイデン大統領の気候変動特使であるジョン・ケリー氏が最近のインタビューで
述べたように、ブラックロックの顧客の中には「得られる最高のリターンを求める」
人がおり、「気候」関連の投資からは必ずしもそれが得られないと述べています。
「グリーン商品はしばしば高いコストを伴うという事実を正直に話す必要がある」
と認めています。しかし、高コストで低リターンの
「気候」政策が企業の利益を減らし、その投資家の利益を減らすことは、
歴然たる事実となっています。
2022年1月以降、ミズーリ州、サウスカロライナ州、ルイジアナ州、ユタ州、
アーカンソー州、ウエストバージニア州の保守系の財務局が、ブラックロックの
ESGとネットゼロの方針を理由に30億ドル以上の資産の運用からの切り離しを
発表しました。
ブラックロックは最近、「Setting the Record Straight」というウェブサイトを
立ち上げ、保守系や他の心配する投資家を安心させるために、顧客の「投資目標」
を達成し、顧客の優先事項を反映できるような「幅広い投資商品の選択肢」を提供すると
主張しています。しかし、ブラックロック社は、保守系顧客の「投資目標」や「優先事項」
を満たすために、化石燃料の生産拡大を促すような商品を提供するのだろうか?といえば
懐疑的です。
ブラックロックの矛盾は
ブラックロックは、化石燃料企業に投資しています。問題は、その後に、
化石燃料資産の売却を含むネット・ゼロ達成計画の作成と実行を企業に迫ったり、
エクソンの場合のように、環境保護主義のヘッジファンドが提案する
取締役候補に賛成票を投じたりしています。これらはすべて、ブラックロックが
掲げるネット・ゼロを推進し、化石燃料の生産を停止させるためのものですが
このような行動は、保守系の「投資目標」や「優先順位」と矛盾したものに
なります。実際、保守系の州司法長官の書簡では、「ネット・ゼロを目指す企業が
廃棄した化石燃料資産」を好機的に購入することで、投資家のリターンを
最大化することが提案されています。
ブラックロックは、化石燃料の生産を促進する商品を提供することができる。
現在のエネルギー危機が教えてくれたことは、化石燃料が世界の平和と繁栄に
不可欠であり、今後もそうであろうということである。現在までのところ、
S&P500種構成企業のうち、好業績企業20社のうち19社が化石燃料生産企業、
もしくは化石燃料に関連する企業です。つまり、化石燃料の増産に投資することは、
経済的に合理的なのです。しかし、ブラックロックがそのような商品を
提供することを、民主党系の顧客は許容すしません。
実は、ブルーステートの反応はすでに始まっています。14人の民主党系の
金融担当者は、ブラックロックが保守系の顧客を維持するためにネットゼロの
スタンスを緩和することを懸念し、「自分たちの政治的見解に賛同しない
金融会社をブラックリストに載せ」、「気候変動は現実である」と認めないことが
財政的に悪い影響を与えると皮肉にも保守系の州を批判するウェブサイトを
開設しています。
これは、ブラックロックや他の金融会社がESGやネット・ゼロから手を引かないように
という合図であることは、誰もが知っていることです。その1週間後、ニューヨーク市の
会計監査官であるブラッド・ランダーは、ブラックロックがネット・ゼロへの
コミットメントを緩め、ニューヨーク市の年金(彼の管轄下)と「我々の地球」(管轄外)の
両方に不利益をもたらすことを懸念して、フィンク氏に手紙を書いています。
ランダー氏は、ブラックロック社とのビジネス関係を「気候変動に対する責任
という観点から慎重に見直していく」と述べています。
ブラックロック社は、ニューヨーク市のために約430億ドルを管理しています。
まとめ
このように、ブラックロックはブルーとレッドの間で立ち往生している感じです。
ESGの投資基準を採用し続ければ、ニューヨーク州のビジネスを失い続け、
受託者義務に違反したとしてニューヨーク州の裁判所で多くの訴訟を起こされる
リスクがあります。一度でも懲罰的損害賠償が発生すれば、それはものすごい
金額い発展しかねません。しかし、ESGを放棄すれば、青い州のビジネスを失い、
とにかくウォール街の企業をあまり好まない民主党系の規制当局の怒りを買う
危険性もある。また、ブラックロックが、形式的にはESGを維持し、実質的には
ESGを放棄する矛盾を行うと、今のような両者から反感を買う結果となりそうです。
こおように、ブラックロックはESG投資について、厳しい状況であり、
さらに悪化する可能性をはらんでいるようです。
(NR.Capital Market より)
https://www.nationalreview.com/2022/11/esg-blackrocks-hard-place/
ESGのダブル・マテリアリティの意味とJPモルガンの解釈は!