”トランプリスク”はどこまで織り込まれているのだろうか?クリントン政権で本当にドル円は上昇に転じるのか?
基本的なトランプリスクとは、「リスクオフ」、つまりリスクの高い
資産を避け、メキシコペソの下落に備えるということです。それは
ボラティリティーの上昇、金価格の上昇、株価の下落、債券利回りの
低下、先進国通貨に対するドルの下落、新興国通貨に対するドルの
上昇を想定されます。
そしてトランプ氏が公約の一部でも実行に移した場合、インフレが
誘発され、こうしたリスクオフの取引が想定とは正反対になること
も想定されます。
本当にトランプ政権になった場合の市場は?
ヒラリー・クリントン氏の私用メール問題に関し、コーミーFBI長官が
議会に書簡を送った10月28日以降、このリスクオフの動きが始まって
います。
同じ期間の市場の動きを見てみると、S&P500種指数は2.5%下落、VIX指数は
13から19.3に上昇しています。
これでトランプリスクはほぼ織り込んだかといえば、そうではないよう
に思われます。
市場がトランプ氏を警戒するには正当な理由は、30年に及ぶ自由貿易への道を
断ち切り、外交政策の方向を転換すれば、世界は大きく不安定化し、未知の影響が
生じる可能性までは織り込んでいません。トランプ氏の経済政策は一貫性がない
ので、真実をこれほどいい加減に扱う人物を指導者にすれば、どれほどインパクト
を与えるのか誰も読めないからです。
トランプ氏の政策ではっきりしていることは、つまり借り入れと支出が増え、税収は
減ります。だが、そうしたアプローチはインフレにつながるとともに、国債が増えること
を意味し、いずれも債券利回りを押し上げることになります。
トランプ氏はFRBのイエレン議長を批判していますが、これはFRBが一段と政治に
振り回されることを示唆しており、このことも債券市場の信頼感にとって悪材料に
なります。
現段階では、貿易戦争が経済に打撃を与えるリスクが市場の主な分析対象となって
いますがトランプ大統領が何をしようとも、米国の借り入れが増加し、税収が減少する
ことはまず間違いないように思われます。彼は中国との貿易戦争や北米自由貿易協定(NAFTA)
の解体に着手するかもしれないが、減税によって財政赤字や政府債務が増えることは
ほぼ確実のように思われます。 国債が売られる一方で物価連動国債(TIPS)が買われる
可能性もあります。
ではクリントン政権の場合のシナリオは?
クリントン氏が選挙に勝った場合には、たしかに市場は一時的な安心感が
走るかもしれませんが、たとえばドル円についてそのまま上昇していくか
といえばそう簡単ではなさそうです。
これほど接戦に追い込まれたクリントン氏にとって、貿易政策について
はTPPをはじめとして、日本にはきびしいものになると予想されます。
またFBIのメール問題の捜査は政権運営後も尾を引く可能性が高く
これもまた時限爆弾として影を劣るシナリオが考えられます。
まとめ~ドル円の方針は
リスクオフとして、トランプリスクへのヘッジはある程度この
1週間で進んだと思われますが、本当の意味でもしトランプ政権
になった場合のリスクをまだ市場は織り込んでいないように
思われます。
またヒラリークリントン政権になっても貿易面ではとくに不透明
な部分が多く、結論としてドル円の方針はドルの戻りを継続した
ほうがいいと個人的に思っております。