
ソフトバンクのARM買収でポンド買い円売りにつながるのか?
ソフトバンクがまたしても大規模な買収攻勢に出てきました。
イギリスがEU離脱後に検討していた半導体企業のARM買収
を発表しています。
最大規模の買収額
320億ドル(約3兆3000億円)余りをかけた英半導体開発大手ARMホールディングスの
買収は、ソフトバンク史上最大です。孫社長の後継者候補だったニケシュ・アローラ氏が
代表取締役副社長の座を先月退いてから初の大型取引となります。
ソフトバンクはこのところ、中国の電子商取引大手のアリババグループ
やフィンランドのゲーム会社スーパーセルなどの株式売却で2兆円近くを調達していました。
一部の株主はこれが債務縮小につながることを望んでいましたがソフトバンクは今回、
やがて長期融資に転換されるつなぎ融資で新たに1兆円を借り入れることになります。
ソフトバンクは英半導体開発大手ARMホールディングスを約3兆3000億円で買収します。
この買収は妥当なのか?
ソフトバンクが2013年に米携帯電話サービス大手スプリントを200億ドルで買収した際には、
純負債が6倍に拡大しました。スマートフォンの95%に使われている半導体の設計を手掛ける
ARMは、少なくとも収益源になるようです。半導体メーカーへ設計をライセンス提供し、
保有資産の少ない事業モデルの下、過去3年間のフリーキャッシュフローは毎年約5億ドル、ネット
キャッシュ(現預金と短期保有有価証券の合計から有利子負債を差し引いた金額)は
12億ドルに上ります。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによると、2020年まで
にARMの調整後利益は倍増する見通しです。
それでも、ソフトバンクは相当な代金を支払うことになります。買収額はARMが今年計上
するとみられる利益の50倍近いです。英ポンド安も大して助けになっていません。
ARMは売り上げの大半をドルで稼ぎ出しているため、同社株価はEU離脱が選択された
英国民投票後に17%上昇しています。ソフトバンクに味方するのは円高と低金利ですが
円建てに換算すると、ARM株価は過去1年間で15%安となっています。
多額の買収額そしてポンド買いにつながる?
スプリントの株価は、アローラ氏の辞任発表当日に8%高をつけた後、さらに
20%上昇しました。資産売却がバランスシート改善につながるとの見方も手掛かり
の一つになったからです。だが調達した資金が全てARM買収に使われる見込みとなり、
こうした望みは確実に打ち砕かれました。
ソフトバンク、スプリント両社の株主にとっての希望は、別の企業がより高い金額での
ARM買収を決めることだろう。ARMが入札にかけられた形跡はない。スマホや半導体の
メーカーが争奪戦に乗り出す可能性はあります。
孫社長は早くも昔の作戦に戻ってしまい、まずは約1兆円近い資金調達と、同時に
ポンドの調達に動くことになると思われます。
なによりも、イギリスがEU離脱後、ポンド安一辺倒だった市場のセンチメントに
この買収劇で、センチメント的にもポンド安にいったん歯止めがかかるきっかけ
になるかもしれまん。