ジャクソンホール会議2020年のパウエル議長発言でFXと金価格に及ぼす影響は!?
FRBのパウエル議長は、今年のジャクソンホール・コンファレンス
(テレビ会議)の講演で、金融政策の見直しが完了したことを報告し、
改訂版の「金融政策の長期目標と戦略」として、その成果を公表し
ました。
パウエル議長は、2%を超えるインフレ目標設定の
可能性に言及しました。
パウエルの金融政策改定のポイントは!
パウエル議長は、政策目標としての「最大雇用」を数値で
示すのは不適切との従前からの考えを確認しています。
また、「2%インフレ」の政策目標も堅持するとともに、
金融政策の運営は経済見通しやこれに対するリスクに基づく
フォワード・ルッキングであるべきとの考えも維持して
います。その上でパウエル議長は、政策金利が実質的な
下限の近傍にある下での新たな政策運営の戦略として、
2つの政策目標に関する改訂点を
指摘しています。
このうち最大雇用の達成は、単なる失業率の低下でなく幅広く
包括的な目標である点を明記するとともに、政策運営を
最大雇用からの乖離ではなく、雇用の最大水準に
対する不足分の評価に基づいて行う方針に改めています。これは、
実際の雇用が最大水準を上回っても、インフレの加速等の懸念が
生じない限りは、金融引き締めを行わないことを意味しています。
「2%インフレの達成」に関しては、時間的な平均として2%の
達成を目指すと新たな方針を採用しています。つまり、2%を下回る
インフレが続いた時期の後には、2%を緩やかに上回る時期が
続くように金融政策を運営することを示唆しています。
パウエル議長は、「平均」を定義する上で特定の算式に縛られること
はない点を強調し、新たな政策運営は柔軟な平均インフレ目標と
理解しうると説明しています。
今回の改定で「平均インフレ目標」を明示的に採用したことは
大きな意味があると思われます。「平均インフレ目標」を正式に
採用する以上は、政策運営をより明示的に拘束することになります。
パウエル議長が示した緩和バイアスは、最大雇用の達成にも
オーバーシュートを認めたために、物価と雇用の双方の面から
働くことを意味します。
金価格への影響は?
FRBによる金融市場支援が金には有利に働くとみられています。
マネーサプライは、今後も増加していき、セイフヘイブン嗜好の
投資家にとっては、まさに金がうってつけの状況になっています。
ここまで低金利が続けば、金への志向が高まることが
容易に想定されます。
FRBが、インフレ上昇容認の姿勢を明示したことで、
金が再び騰勢を強めるとの見方が強まっています。金支援材料は、
依然として有効で、実質金利はマイナスで、政府債務は
拡大しているなかにおいては、アップル、マイクロソフトやフェイスブック
以外にセイフヘイブン効果が期待できる銘柄はない、と分析している
アナリストもいます。
FXに及ぼす影響は
このジャクソンホール会議でパウエル議長が示唆した
金融政策改定でFXに及ぼす影響として考えられるのは
現状のドル下落トレンドは、まだ続く可能性が高い
ということです。今後も米国で追加刺激策が採用される
可能性が高く、その背景としては、米国内ではウィルス対策が
必ずしも成功しておらず、FRBが今回のパウエル議長の発言
のように緩和政策を続けると明言していることから、ドルには
下げ圧力が継続しているようです。とくに対新興国通貨に
ついてはその傾向が顕著です。
FRBの金融政策では、仮に米経済が回復に向かったとしても、
米金利が大きく上昇すると期待はできないので、米ドルが
大きく上昇する見通しが立たないようです。
まとめ
今回のジャクソンホール会議は、異例のテレビ会議
で行われましたが、注目されたパウエル議長の発言
は現在の金融緩和をさらにコミットしたと認識
されています。とくに、インフレ目標を平均で
モニターすることと、雇用の最大化のためにあらゆる
手段を尽くすことを示唆しているようです。
この環境下で、金価格の上昇トレンドは引き続き
続きそうな気配です。