ウニ・クレジットとモンテ・パスキ銀行の不良債権処理がこの秋欧州経済のカギとなりそう
ドイツ銀行の株価はいったんは底を脱出したように見えますが、欧州銀行の
一番の悩みであるイタリアの銀行の問題はまだ打開の糸口すらも見えていない
ようです。
窮地にあるイタリア第1位と第3位の銀行
ウニクレディトの再生に向けた大規模な改革計画を策定中のジャンピエール・ムスティエ新CEOは、
窮地に追い込まれているようです。
ウニクレディトの問題は、低迷するイタリア経済だけでなく、危うい状態にある欧州全体の
金融安定も脅かねない大きな問題です。
イタリア第3位の銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナも苦境に苦しんでいます。
モンテ・デイ・パスキは8日、ファブリツィオ・ビオラ(CEO)が辞任することで取締役会
と合意しました。
280億ユーロの不良債権処理計画の詳細を詰める作業を進めていた中で起きています。
ウニクレディトの問題は、低迷するイタリア経済だけでなく、欧州全体の爆弾になりかね
くらい規模が大きいです。
ウニクレディトは住宅ローン金利はわずか1%程度で、不良債権が増える一方、利益は
圧迫されています。
手数料収入は14年〜15年の2年間で2%増え、79億ユーロとなったものの、15年の純
金利収入が8%減の120億ユーロにとどまった影響を打ち消すことはできませんでした。
昨年の純利益は17億ユーロにとどまった。ウニクレディトは同時に、3年間で240億ユーロ
の不良債権を処理しなければなりません。
不良債権200億ユーロの処理の道筋立たず
これらの問題が重なった結果、ウニクレディトは4-6月期末時点で、普通株式等ティア1比率
が10.51%、規制要件の10%をかろうじて上回る水準です。
ウニクレディト株が年初来で60%余り下げていることを受け、7月にオンライン銀行
フィネコバンクの10%株とポーランドの同業バンク・ペカオの10%株を売却したと発表し、
投資家心理の底上げを狙いましたが。その数週間後に発表されたストレステストの結果は、
景気悪化シナリオの下でウニクレディトの自己資本比率が7%強という危険な水準まで
落ち込むことが判明し、その後ウニクレディト株は13%下落しました。
それ以降は少し持ち直しているが、過去1年間の下げ幅は55%に達しています。
関係者によると、まずはウニクレディトの資本基盤を少なくとも80億ユーロ増強する
計画です。200億ユーロに上るとされる不良債権の思い切った処理に踏み切るかが、
同行の鍵となりそうです。
ただ、モンテ・デイ・パスキは7月、不良債権280億ユーロを額面価格の27%で売却する
計画を発表しています。
これが事実上、イタリアの不良債権価格の新たな基準となっていることを考えると、
ウニクレディトは自行の不良債権200億ユーロの価値をもっと高く見積もっているため、
売却損は20億ユーロに上る恐れがあります。
イタリアの国民投票の行方にも注目
憲法改正にむけた国民投票がこの秋に行われます。
もしこの国民投票に敗れると、イタリアの不良債権処理を穏やかにすすめようと
しているレンツィ首相も辞任に追い込まれる可能性が高いです。
イタリアの政局とイタリアの銀行の不良債権の問題が同時にくる懸念も
ありこの秋注目すべき材料となりそうです。