
インディビジュアル・バイアウト(IBO)のしくみとアセットマネージメント会社の役割は!
今海外の投資家、とくにファイミリー・オフィスなどからの
日本へのインディビジュアル・バイアウト(IBO)にに対する関心が
高まっているようです。
そこで今回は、そのIBOについて調べてみました。
目次
インディビジュアル・バイアウトのしくみ
基本構造:
個人(多くは元ビジネスマンや起業志望者)が、中小企業などを買収して経営者と
なります。
通常、以下のような資金調達スキームが使われます:
自己資金(頭金)
金融機関からの借入(ノンリコースローンや日本政策金融公庫)
投資家からの資金(エンジェルや小規模PEファンド)
買収後は、オーナー社長となって自ら経営改善や成長戦略を実行して企業価値を高める。
対象企業の特徴:
オーナーが高齢で後継者がいない中小企業
安定収益があり、改善の余地がある
ローカルなニッチ産業に属しているケースが多いです。
ビジネスとしてのメリット
1. 少ない資本で経営者になれる
レバレッジ(借入)を活用できるため、自己資金が少なくてもOK
自分でゼロから起業するよりリスクが低いケースもある
2. 既に収益のあるビジネスを引き継げる
スタートアップと違い、既存の顧客・従業員・設備などが揃っている
キャッシュフローがあれば、借入の返済も見込める
3. 経営スキルを直接活かせる
元コンサル、投資銀行、事業会社出身者がスキルを活かして成長戦略を実行可能
4. エグジットも視野に入る
事業改善して数年後に他社やファンドに売却(セカンダリーバイアウト)することも可能
ビジネスとしてのデメリット・リスク
1. 経営責任の全てを背負うプレッシャー
買収後は完全に自分が責任者。財務・営業・人事すべてに関わる必要がある。
2. 財務リスク(借入)
買収資金の大部分が借入だと、キャッシュフローが落ちたときに危険
コロナのような外的要因で収益が悪化すると返済が厳しくなる
3. 企業文化・従業員との摩擦
買収された側の従業員や幹部と信頼関係を築くのが難しいケースも
地元企業だと、地縁・血縁のしがらみも存在
4. バリュエーションとデューデリジェンスの難しさ
中小企業は財務が不透明なことも多く、過去の数字が鵜呑みにできない
見えない債務・問題が潜んでいることもある。
アセットマネージメント会社の役割は
海外の投資家やファンドが日本でのIndividual Buyoutに興味を持つ場合、
それを支援・実行する日本国内のアセットマネジメント会社や関連プレイヤーは、
いくつかの重要なビジネスチャンスや役割を担うことができます。
以下にその可能性を整理してみます。
アセットマネジメント会社等が担えるビジネスモデル
① サーチファンド型ビークルの組成・運営支援
概要:個人買収家(Searcher)が対象企業を探すために、ファンド(Search Fund)
を立ち上げ、そこに海外LP(Limited Partner)から出資を受ける。
AM会社の役割:
Fundの受け皿としてのSPC設立・管理
LP向けレポーティング
国内での財務・法務・税務デューデリの実施支援
ターゲット企業発掘のネットワーク支援
② M&A仲介・オリジネーション支援
概要:海外投資家に対して日本の中小企業M&A案件を紹介・仲介する。
AM会社の役割:
国内のM&A仲介・士業とのパートナー提携
買収候補の精査・ローカル情報の提供
買収後のPMI(統合支援)コンサルの提供
③ クロスボーダー・インキュベーション機能
概要:海外からの買収後、経営者となる人材(日本人・外国人)を育成し、実際に派遣する。
AM会社の役割:
ローカルマネージャーの発掘・育成
海外ファンドと日本人経営者候補のマッチング
マネージャーのKPI設計、経営モニタリング
④ 共同投資(コ・インベストメント)
概要:海外のPEファンドが主導する買収に対して、国内AM会社が
コ・インベスターとして参画。
AM会社の役割:
日本国内の規制・手続きのサポート
ローカルの信用力補完としての出資
Exit戦略の立案支援(例:東証上場 or 国内売却)
⑤ ファンド管理・ファンドレイズの日本側サポート
概要:海外ファンドが日本向けに専用ビークルを組成する際のファンド管理業務。
AM会社の役割:
信託・金融商品取引業の免許を活かした管理受託
日本の機関投資家・富裕層向けファンドレイズ支援
税務・法務上のクロスボーダー最適化(タックスストラクチャー設計)
こうしたビジネスが注目される背景
日本は事業承継ニーズが大きい市場(中小企業の6割以上が後継者不在)
海外ファンドは為替差益やバリュエーションの割安感に注目
コスト効率の高い「個人主導型MBO」はPEにとって魅力的な投資機会
日本のローカル知識やネットワークを持つAM会社の付加価値が高まっている
実例(トレンド)
サーチファンドを支援する日系のアドバイザリー会社(例:サーチファンド・ジャパンなど)
が増加中
小規模M&Aに特化したファンド(1社1〜3億円程度の投資規模)を日本国内で設立する
ケースも出てきている
海外ファンドが日本での足がかりを得るため、まずはローカルパートナーを探しているケースが多い
もし想定している具体的な国(たとえば米国やシンガポールなど)や、投資家のタイプ
(エンジェル、ファミリーオフィス、PEファンドなど)があれば、さらにフォーカスした
米国ファミリーオフィス向け日本のIndividual Buyout投資スキーム
投資家の特徴(前提)
長期的視野、安定的キャッシュフローを重視
ハンズオンよりも信頼できるローカルパートナーと組みたがる
小規模($1M〜$10M)でも独自性のある案件に関心
時に後継者育成・地域貢献など「インパクト」も重視
スキーム全体像
[US Family Office]
│
出資
▼
[投資ビークル(日本SPC or Cayman等)]
│
買収資金提供
▼
[日本国内のターゲット企業]
▲
経営実行
│
[ローカル経営者(個人/MBO候補)]
スキーム詳細構成
① ファンド・SPC設計(ファミリーオフィス → 投資ビークル)
構造例:
USファミリーオフィス → ケイマンSPV → 日本国内SPC(GK/合同会社) → ターゲット企業へ出資 or 株式買収
理由:税務透明性・米国側の税制メリットを意識
必要な支援:
信頼できる日本側アセットマネジメント会社(AM)または信託会社
クロスボーダー税務アドバイザー(移転価格/PE認定リスク等)
② Dealソーシングと経営人材マッチング
米国側ニーズ:
日本の中小企業市場に精通したパートナー
買収後に企業価値向上を実現できる経営者候補の存在
日本側支援者(AM会社・M&Aアドバイザリー等):
ターゲット企業のソーシング(例:後継者不在企業、地域密着型ニッチ企業など)
経営者候補の発掘(MBA卒、元商社・外資出身者など)
③ デューデリジェンス・契約・クロージング
課題:日本の中小企業は財務・法務の透明性が低い場合がある
支援者の役割:
ローカル会計士・弁護士による事業・財務DD
外資向け契約条件の調整(例:英語契約ドラフト、表明保証の整理)
④ PMI支援とモニタリング
米国ファミリーオフィスの不安:
投資後の企業運営に直接関与できない
定期的なモニタリング・レポートが欲しい
AM会社が提供できるもの:
経営指標・月次レポートの作成(英語)
KPI管理・中期経営計画の実行モニタリング
Exit戦略の提案(事業承継先への再売却、配当モデル、再MBO等)
ファミリーオフィスが関心を持ちやすい業種例(日本)
業種 魅力ポイント
医療・介護関連 安定キャッシュフロー・社会貢献性
B2B製造業(部品加工) 地域に根差した高収益・ニッチ市場
ローカル食品加工 ブランド育成、インバウンド需要
特定資格業(建設、調剤など) 規制業種で競争少・収益安定
利回りイメージ(参考)
初期投資規模:¥100百万円〜¥500百万円
IRR期待値:8〜15%
投資期間:5〜7年(売却 or キャッシュフロー回収)
日本のAM会社にとってのメリット
信託・AM報酬(AUM課金)
DD・PMI支援のアドバイザリーフィー
コ・インベスト機会(一部自己資金出資によりリターン向上)
補足:実行上の留意点
外為法(FDI規制):一部業種では事前届出が必要
税制:日米租税条約、法人税・配当課税の整理が重要
英語対応:ドキュメンテーションや経営陣とのコミュニケーション体制
まとめ
今回は、インディビジュアル・バイアウト(IBO)について
調べてみました。
今日本では、地方での高齢化がすすみ、優良企業にもかかわらず
後継者問題が頻発しています。そんななかで、IBOとかまたサーチファンド
は注目される分野となっているようです。
参照:サーチファンド