イタリア五つ星運動のグリッド氏が主導権を握った後のEUはどうなる?
今回のイタリア国民投票がの結果で英国のEU離脱決定や
トランプ氏の米大統領選当選など、今年勝利が相次ぐ
反既成勢力の政治家には勲章がまた一つ増えることになりそうです。
五つ星運動の追い風にもなります。
2017年のユーロの行方の前哨戦
米国と同じように欧州でも有権者が政治エリートに怒りを覚え、
経済成長の鈍さに不満を抱いています。
フランス、ドイツ、オランダでは2017年に大統領選や議会選が迫り、
極右ポピュリスト政党がいよいよ欧州でも政権を握る現実味が
濃くなっていきます。
欧州の政策当局はかねてイタリアの高水準の債務と不安定な政治情勢を
懸念している。イタリア経済は2007年以降、リセッションに相次いで見舞わ
ています。
経済協力開発機構(OECD)によると、15年末時点でイタリアの失業者のうち
無職期間が1年以上の人は60%近くに上っています。
レンツィ首相は2014年の就任以降、さまざまな景気対策を打ち出してきたが、
景気回復の足取りは鈍い。イタリア経済は15年に4年ぶりのプラス成長となったものの、
それ以降は鈍化し、グリッロ氏や五つ星運動の台頭を許しています。
13年の総選挙では、五つ星運動が得票率26%で163議席を獲得、世論調査では、
いま総選挙が実施されたら五つ星運動の候補者を支持するとの回答が
30%近くに達しています。フランスの極右政党・国民戦線など欧州有数の
ポピュリズム政党の支持率とほぼ並ぶ状況です。
16年6月に行われたローマ市長選では、五つ星運動の女性候補ビルジニア・ラッジ氏が
70%近くの票を獲得して圧勝しています。
国民投票の結果は織り込み済み
今回の国民投票は上院議員数を現行の315人から100人に削減することと、
下院で承認された法案を阻止できる上院の権限を制限するための憲法改正
についてです。改正されれば地方と中央政府とのバランスが変化し、中央政府
により多くの権力が移行することになります。すでに承認されている選挙制度改革
と併せて、憲法が改正されれば経済改革が実施しやすくなるとレンツィ首相は
話していますが、これは、もし不相応なリーダーが現れた場合、制御する
制度を失うことにもなります。
今回の国民投票は、この案件の内容よりも、レンツェ首相への不信任投票
の色合いが強くなってしまい、五つ星運動のグリッド氏により勢いを持たせる
結果となりそうです。