イギリス不動産ファンドの解約凍結で不動産価格は下落し続けるのか?
今週イギリス不動産ファンドがこぞって支払を凍結させたことが
市場のセンチメントを悪化させたひとつ要因となりました。
イギリスの不動産ファンドの大多数はオープンエンド型で、2013年から
15年にかけて81億ポンドの資金を集めていました。
ファンドはその資金を投資する必要があり、既に高くなっていた
ロンドンの不動産相場が一段と過熱した要因になりました。
ここにきて一部の投資家が逃げ出し、ファンド運用会社は資産売却を
強いられています。解約を停止しても、この動きは止められないようです。
英中銀イングランド銀行は5日に発表した金融安定報告で、
オープンエンド型ファンドの構造は、市場の調整を増幅する可能性がある、
と警告しています。
一方で、銀行の不動産貸付残高は2007年当時よりもはるかに備えを固めています。
英国の商業用不動産を裏付けとする債権総額は、07年当時よりも約3分の1少ない上に、
融資基準は厳格化しています。
イギリスの居住用不動産市場が下落し続けるリスクは、同じような投資家の売りが
押し寄せてくることです。投資家が住宅価格の値上がりを狙い低利の資金を利用したため、
英国の銀行では、いわゆる「賃貸物件購入」用ローンが主な成長分野になっていて、こうしたローンは、
英国の有担保貸し出し残高全体の17%を占めています。
ミューチュアルファンド投資家に追随して居住用不動産の所有者も逃げ出すと、イギリスの住宅価格の
調整につながる可能性が高いようです。
イングランド銀行が警告しているように、賃貸物件購入の投資家は景気循環に従い行動する可能性が
高いので、これらの行動が今後の英国の不動産市況に影響を及ぼしそうです。
一方で、このポンド安と大規模な追加緩和が、株価と同時に不動産価格を短期的には持ち上げる
という意見も聞かれます。イギリス政府がこの事態に対処して、シンガポールのように海外からの
投資をさそうあらゆる規制緩和をするとの意見も見られます。
焦点は、イギリスの不動産市況がBrexitの前にすでにバブル状態に陥っていたのかどうか
長期間にわたり金融緩和をしていたイギリスだけに、この非常事態での金融緩和がどれだけの
効果があるのか、やはり冷静に見るべきだと思います。